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企業合併を成功に導いたCIOの手腕【後編】シェアードサービス(2/3 ページ)

従業員のモチベーション維持や顧客データベースの統合など、企業合併に際して生じる課題は大きい。ある信用組合のCIOは、解雇を一切行わず、逆に充実した社員教育を施すことで大規模なシステム統合を成功させたという。

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コアアプリケーションで顧客データを統合した

 エンビジョンでは、コネリー氏が加わる少し前に、新しいコアアプリケーションとして、フィンセントリックのバンキングシステム「Wealthview Banking」を実装したところだった(フィンセントリックはその後、オープンソリューションズに買収されている)。新しいシステムにより、それまで使われていた複数のレガシーシステムが単一のプラットフォームにリプレースされた。

 このシステムでは、XMLベースのゲートウェイを介して、顧客関係管理(CRM)やデータウェアハウジング(DWH)、データ収集、債権回収、ビジネスインテリジェンス(BI)など、各種システムのデータのビューを統合できた。つまり、エンビジョンは預金額や支払い額、借用額といった顧客データを初めて単一のビューで表示できるようになったのだ。そして、高い性能と高い可用性を目指して設計されたオンライントランザクション処理エンジンにより、エンビジョンは各顧客の価値を分析し、その価値を最大限に高め、保持力を強化するための戦略を立案できるようになったという。

 コネリー氏によると、このシステムの導入はエンビジョンの業務にとって大きな恩恵となり、ワークフローや顧客サービスの大幅な改善につながったという。そういうわけで、同氏は2つのIT部門の統合を進めるかたわら、ファーストカルガリーにもこれと同じプラットフォームを導入することを決め、2年がかりの移行プロジェクトを始動させた。このプラットフォームは、インユニゾンの共用サービスモデルにとって重要な要素となっている。

 コネリー氏はエンビジョンとファーストカルガリーから総勢35名のスタッフを集めてコアチームを結成し、この移行プロジェクトに取り組ませた。そして同社はベンダーから、2つのIT部門のライセンス料を統合することで、契約の全期間に渡って料金を24%削減してもらう約束も取り付けた。

 2006年11月のとある金曜日、コネリー氏は新システムのスイッチを作動させた。土曜の夜までは、すべてテストモードで稼働し、日曜日と月曜日には、IT部門が監査、バランス、整合性のチェックを実施した。ATM、デビットカード、クレジットカードの取り引きは日曜日に始動し、火曜日には利用が全面的に開始された。

 「これは、かなり大掛かりな取り組みだった。その過程で、われわれは口座の構造を口座中心のものから組合員中心のものへと変更した。それに伴い、口座番号や小切手、デビットカード、Webバンキングプラットフォームなども変更する必要があった。わたしはシステムの大規模な切り替えを過去に6〜7件ほど担当したことがあるが、今回の移行は最もスムーズに行えたケースの1つと言える。何千もの可動部品、100種類ものシステム、20社のサプライヤー、10万人の組合員を管理しなければならなかったが、それらがすべて計画どおりに進行した」とコネリー氏は語っている。

 だがコネリー氏によると、レガシーなバンキングシステムの問題は解消できたものの、両組織は依然としてあまりに多くのアプリケーションを実行しているという。両組織のアプリケーションの数は、具体的には250種類に及ぶという。「われわれはアプリケーションの数を減らす必要がある。60〜70種類程度に減らしたい。細々とした多数のシステムがバラバラに追加されている。われわれはエンタープライズアーキテクチャ戦略への移行を進めているところだ」と同氏。

 その一環として、12種類の財務/人事アプリケーションを1つのERP(統合基幹業務システム)にまとめる選択肢も検討中という。

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