ナンバーワン企業の共通点――「たった1つの想い」:Gartner Column(1/3 ページ)
業界ナンバーワンの企業を調査したところ共通点が見つかった。「たった1つだけ保有していること」である。
今回も、インターネットメディアの双方向性という特徴を生かし、この連載宛てに届いたご質問を基に、「大切なこと」を説明いたします。ナンバーワン企業の共通点についてです。
前々回の記事『IT予算をさらに極めましょう』に対していただいたご質問です。「同業他社は、どんなIT予算のポートフォリオを使っているのかを教えてください」というものでした。「残念ながら、当社では個社のIT予算ポートフォリオをどのようになさっているのかを調査したことがありません」と回答しましたが、これは嘘ではありません。
なぜ調査したことがないのか。意味がないとは言いませんが、どのようなIT予算のポートフォリオなのかを調査したところで、回答は、十人十色になることが分かっているからです。しかも、企業の周辺状況や経営およびITの成熟度の違いや時期、時代により違うポートフォリオを使って管理している可能性もあります。「臨機応変」に「経営が課題と思っていること」を「わかりやすく説明」できるように、お好きなポートフォリオを「ご自由にアレンジして」お使いいただければいいのです。
実は、わたしは前々回の記事が掲載された際に、以下のようなご質問が来るのをお待ちしていました。しかし、ご質問が無かったのでちょっと寂しかったです。「第4回の図1において、なぜ開発費と運用費の比率が変化したのですか?」と。
賢明な読者の方は「そんなことは分かっています」とおっしゃるでしょうか。本来は、図2のように表現しなくてはなりません。そうです、管理費用が比率として上がっています。つまり、開発、運用費用の比率を最適させるために、管理的な側面をIT内部で持ちましょうというお話なのです。
前々回は、ポートフォリオの考え方だけを説明したので、管理費用やその他費用の説明をしませんでした。IT部門には、調査/企画や財務面での管理を専任で担当するリソースが必要ということです。その活躍によって、開発/運用の比率を改善させるのです。その他費用というのは、おおむねITプロジェクト運営を円滑に進めるためのリサーチとお考えいただいて問題ないでしょう。
開発費と運用費の比率は、魔法をかけたのではなく、管理に手間隙をかけて運用コストを下げて新規開発にリソースを配分したのでした。「そんなこと、言われなくても分かっていたよ」と皆さんが仰っていただけたなら、こんな説明は蛇足なのですが。
今日の論点
それでは今日の論点です。「自分のやるべきことを棚に上げて人の行動を見ても、自分のやるべきことは分からない」ということです。何だかITとは関係ないお話に聞こえますが、企業の経営戦略やIT戦略を立案する際には、とても重要なことです。Gartnerのコンサルティング部門は、ベンチマーキングというサービスを提供しています。簡単にいうと、Gartnerが持つ膨大なデーターベースを基に客観的なベンチマーキングを実施し、課題解決の方策を立案するというものです。
ベンチマーキングする際は、自社の課題を浮き彫りにしておく必要があります。
- 1 貴社を取り巻くビジネス環境は、どのようですか?
- 2 あなたの上司(経営トップ)は、何をITに求めていますか?
- 3 あなたは、上司(経営トップ)から信頼されていますか?
- 4 あなたは、同僚であるほかのエグゼクティブから信頼されていますか?
(競合)他社の事例をお尋ねになる方に上記の質問を投げ掛けると、困惑します。それよりも(競合)他社のことを教えてほしいのだと仰います。わたしは、このコラムを「経営とITの関係を改善する」という難解なテーマに基づいて執筆してきました。あなたの、マネジメントの方向性や、企業の戦略、いや、もっと根源的なお話をしますと「あなたや、あなたの会社の存在価値は何かを考えてお仕事をなさっていますか」ということです。その答えがない方に、経営とITの関係を改善することはできません。
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