ナンバーワン企業の共通点――「たった1つの想い」:Gartner Column(3/3 ページ)
業界ナンバーワンの企業を調査したところ共通点が見つかった。「たった1つだけ保有していること」である。
ビジネス運営の卓越性で有名な企業は、米Wal-Martでしょう。Wal-Martは世界最大のスーパーマーケットチェーンを形成しており、日本では西友を子会社にしています。ELP(Everyday Low Price)戦略を打ち出し、徹底した省力化と合理化を実施しました。これも素晴らしい価値理念です。
顧客との親密性で有名な企業は、日本のセブンイレブンなどが挙げられるかもしれません。セブンイレブンは、POSデータの収集・マイニングを通じて、個々のお店のお客様の嗜好に合致するように商品を手配し、棚割りを実施します。地方性や時間帯などによって売れ筋が違うことにも対応するのだそうです。オフィスが近くにある場合は、お昼どきになるとお弁当需要のために、稼働レジの台数を増やしたり、お店のレイアウトまで変更したりするそうです。これも、素晴らしい価値理念です。
よもや……「当社は、全部が価値理念」だと言わないでください。商品の優位性を価値理念に置いていると表現したソニーでは、それ以外に力点を置いていないかというと、そんなことはありません。徹底した製造コストの低減、無駄の排除を実施しています。そして、コンシューマー向け家電が主力商品ですから、全国どこに行っても、サービスセンター網はしっかりしています。
修理をお願いするために、持ち上げようとすると腰を抜かすほど大きく重い家電品もありますから、出張修理にも応じます。ビジネス運営の卓越性や顧客との親密性でも落ち度はありません。あえて「当社の製品はいつも時代の最先端をいくような新しい技術を実装しています」ということを企業の価値理念にしているのです。
ソニーのブランドマークを見たら何を想像しますか。最先端の技術とか、夢のある製品といったイメージを抱く方が多いのではないでしょうか。これが価値理念というもので、たった1つに集中して、その企業の関係者全員が理解できるものなのです。
経営者の全員が、マイケル・トレーシーの本を読んでいるわけではないので、価値理念という概念で自社を語る必要はないと思います。しかし「あえて言うなら当社の価値理念は何?」ということを理解しておいた方が良いです。他社の事例研究も可能な限り実施した方が良いでしょう。それを戦略計画に生かしていくことは重要です。
「わたしは、ITや情報経営について、○○のような意見を持っている。そして、幹部職員の一員として経営者に影響を与えたい」という思いがなければ、このコラムを読んでいても面白くないでしょうし、日頃のあなたのお仕事もきっと面白くないでしょう。
仮に、あなたが管理職として部下をお持ちならば、部下の方も面白くないでしょうし、既に何人かの部下を失っているかもしれません。会社や業界のせいにして、あなた自身の「思い」のなさをごまかしていませんか。少なくとも3年くらい先の希望や期待を熱く語ってくださいませんか。
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著者プロフィール:小西一有 ガートナー エグゼクティブ プログラム (EXP)エグゼクティブ パートナー
2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」の日本の責任者を務める。日本のCIOは、経験値だけでなく、最新のグローバル標準を研究した上で市場競争力を高めるべきとの持論を持つ。
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