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できる人なら楽しめる「正解のない時代」「2009 逆風に立ち向かう企業」三菱地所

三菱地所は、丸の内再開発の一環として、日本経済再生をリードする新事業の創造を世界視野で支援するという「日本創生ビレッジ」を運営している。世界から集まる起業家の多くは、いま押し寄せる不況を楽しんでいるようにさえ見えるという。

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 「今後ベンチャー企業の目標はIPOだけではなくなる」

 こう話すのは、三菱地所の街ブランド企画部新事業創造ユニット、田中克徳マネージングパートナーだ。三菱地所はIT関連はじめとしたベンチャー企業を育て「東京・丸の内を元気にする」プロジェクト「日本創生ビレッジ」を運営している。

 日本創生ビレッジは、日本経済再生をリードする新事業の創造を世界視野で支援する取り組みだ。この事業をリードする田中氏によると、ユニークなアイデアを持つ起業家が世界中から新丸の内ビルに集まり、米国発の金融危機に端を発する不景気を楽しんでいるようにさえ見えるという。三菱地所が将来への期待を込めて運営する日本創生ビレッジの2008年と2009年について、田中氏に聞いた。


三菱地所の街ブランド企画部新事業創造ユニット、田中克徳マネージングパートナー

ITmedia 金融危機についてどう感じていますか。

田中 米国が金融資本で主導権を握っていた状況が終わり、危機後はさまざまな価値の生み出し方が出てくるでしょう。実際にビジネスのやり方に変化の兆しがあります。例えば、企業同士が得意な技術を持ち寄ってすばやく共同事業を開始し、スピードを生かして先行者利益を確保するような方法が成功パターンとして台頭しつつあります。Googleなどが典型例ですが、日本創生ビレッジにも、Crunchyrollという中国系米国人が立ち上げた動画サイトの運営会社の事例があります。自社の強みを生かし、アニメに特化した動画サイトを立ち上げ、口コミを通じて既に400万人の会員を集めています。大手の映画会社と組んでビジネスを始めるといった話も出てきています。

 こうした環境で求められるのは、正解がないものを生み出す感覚です。正解が見えないことを不安に思う人がいる一方で、挑戦する気持ちが強い人は大きなやりがいを感じているようです。例えば、ベンチャー企業の起業家の目的は、以前なら株式の公開(IPO)のみといってもよかったと思います。しかし、現在は違ってきています。大企業の技術を借りて新しい事業を運営したり、特許を生かしながら経営するなどさまざまな選択肢があります。どれが正解か分からないというのは楽しい要素なのです。

ITmedia 日本創生ビレッジを運営する中で、企業はいまどんなことに悩んでいると考えますか。また、何がそれを解決するでしょうか。

田中 1990代後半からの10年間で企業は無駄な肉をそぎ落とし「筋肉質」になりました。しかし、新規ビジネスに着手できているかというとそうではありません。そこで、多くの経営者はキーワードとして人材育成を挙げています。正解のない事柄に対して、仮説を立て、検証していく人材が不可欠なのです。加えて、実行力も備えている必要があります。

 そうした人材が育つ土壌に重要なのが信頼です。優秀な起業家の多くが「信頼をつかむための方法は対面でのリアルな関係の構築にある」と話します。五感を使って相手とコミュニケーションすることが非常に重要なのです。「まずは会いたい」と話す人が以前よりも増えているのです。そういった創造的な人が集まる場にはパワーが宿ります。三菱地所としては、そうした人に集まってもらって丸の内を元気にしてほしいわけです。

 具体的な動きとして、企業や人による横の交流が多くなってきており、それが日本創生ビレッジへの注目度の高さにつながっています。時代の要請といえます。従来は考えられなかったような組み合わせの連携が求められています。例えば、一般に日本企業では、研究開発から事業化するまでのプロセスをつなぐのがあまりうまくないといわれます。企業が持つ知的財産が金融的に見て価値があるかないかの判断をする際、AさんとBさんではまったく違う答えが出てくるかもしれません。このとき、価値の判断ができるのは結局は人だけです。ということは、物事の価値を評価する際に、さまざまな人と交流しながら、協力し合う必要が出てくるのです。

 最近になり、インド人をはじめ日本に興味を持つ外国人が増えてきています。理由を聞くと「世界第2位の経済大国なのにまだ国際化していないから」といった答えが返ってきました。日本の文化を知りたいといった外国人も多くなってきています。今後、いろいろな価値の生み出し方が登場するでしょう。横のつながりを大事にし、創造的なビジネスマンがこれからの日本をリードすると考えています。

2009年は、小さくてもいいので日本創生ビレッジのモデルケースになるような事例をつくりたいです。金融や知的財産、税制などさまざまな業界を横断的に考えるようなリーダーシップを持つ人の登場がカギになりそうです。

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