【新春特別寄稿】本当にこれから「世界の崩壊」が始まるのか?:ミドルが経営を変える(1/2 ページ)
世界を揺るがす経済危機によって、2009年はより厳しい1年になることが予想される。各方面からは先行き不安の声が絶えない。しかし、実はそれほど悲観するには至らないと考える。
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今回のタイトルは、日本の代表的なビジネス誌である『週刊ダイヤモンド』2008年10月11日号の巻頭特集タイトル「世界大破局 これから本当の崩壊が始まる!?」からの抜粋である。(執筆時における)最新号の2009年1月10日号の表紙にも、「デフレ再来 給料が下がる! 仕事がなくなる!! 悪夢の連鎖を断ち切れるか」とある。同誌は書店での売上高がトップのビジネス週刊誌とのことなので、実際に手に取られた方も多いことであろう。
もちろん同誌のみならず、昨年後半から(日本を含む)世界の経済の先行きを危ぶむ声は鳴りやまない。鳴りやむ気配もまったくない。2009年の日本経済は漆黒の闇に包まれたものとなりそうである。日本を代表する経済学者の1人は次のように現状、そして先行きを憂えている。
「目を疑うような経済指標の悪化が、次々に発表されている。11月の国内新車販売台数が前年同月比27%減、10月の鉱工業生産指数が前月比3.1%減……(中略)……。これらデータは、日本経済が未曾有の経済危機に直面しつつあることを示している。これから生じるのは、2002年からの景気回復が崩れて経済がそれ以前の状態に戻る過程と考えることができる」*1
図1には、ここ数年の雇用関連の各種データの動向がある。最近になるほど悪化を示す青色でセルが色付けられている。
個人消費、設備投資、公共投資、輸出、生産など、いずれにかかわるデータの動向についても変わりない。日本経済は先の見えない真っ暗なトンネルの中にある。そうした姿を示すデータには事欠かない。
専門家の予測は当たらない
先行き不安が予測されるが、筆者自身はそれほど日本経済の先行きを悲観していない(何を能天気なことを、と言われてしまうかもしれないが)。なぜか。プロによる予測はそもそも「当たらない」ものである。
例えば、8万2000以上の政治動向に関する「予測」「予想」を分析した研究によると、プロと称される人々の予想は、過去のデータを単純に引き延ばしたものよりも精度がさらに低いものでしかなかったことが明らかにされている*2。こうした実態を明らかにした研究では、プロと素人の違いは予測の内容や精度には存在しないと指摘している。違いは、予測に自信を持っているのか否か、多くの理由があるのか否かにあるとしているのである。
精度が低いにもかかわらず、プロはなかなか自らの考えを変えようとしない、とも指摘されている。その際にプロは、以下のような「言い訳」を並べるのである*3。
プロの「言い訳」
1. 予測の前提とした条件が変わった。
2. 予想外の事態が起こった。
3. ほとんど紙一重で間違った。
4. 今回は予測した通りにはならなかったが、予測の基本は間違っていない。いつかはそうなる。
5. そもそも政治問題は複雑で簡単に予測がつかない。
6. よい間違いだった(例:ロシアを過小評価するより、過大評価するほうがまだましだ)。
7. 確率の低いことが奇跡的に起こった。
政治の世界に関する予測と経済のそれは違うとの意見もあるだろう。しかし、2007年末にこれほどの暗い事態になると予測したプロはどれほどいただろうか。
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