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コラム

新型インフルエンザパンデミック対策――非常時の事業シナリオNext Wave(1/2 ページ)

いつ起こるかを予測する段階となった新型インフルエンザの世界的蔓延。パンデミックBCPと従来の災害BCPとは何が異なるのか、またその策定ポイントや課題には何が存在するのだろうか。

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パンデミックBCPが新たな課題に

 BCP(事業継続計画)/BCM(事業継続マネジメント)は首都直下地震や火災、あるいはテロといった広域災害に対して事業継続を考えることが目的だったが、近年は新型インフルエンザによる世界的な感染拡大(パンデミック)が新たなリスクシナリオが急浮上している。

 2008年5月に野村総合研究所(NRI)が実施した事業継続マネジメントに関するアンケート(金融・非金融業を合せて約100社)によると、多くの企業が「大規模地震」や「システムダウン」、「外部ネットワークの寸断」、「データセンターの機能停止」などのリスクに対してはBCMが対応済みとの答えが多かったが、今後対応すべきリスクとして、「新型インフルエンザパンデミック」を挙げる企業が金融(32%)・非金融(27.8%)とも高い割合を示したという。

 しかし、パンデミック時に社会システムがどのような影響を受けるのか、あるいは自社の経営リソースは機能するのかなど不確定要素が多く、具体的な対応策よりも不安ばかりあおられているのが現状のようだ。

 新型インフルエンザとは、過去数十年間にヒトに発症したことのないHAもしくはNA亜型のウイルスがヒトとヒトの間で伝播し流行したもの。それが世界的な広範囲に拡大し、高い罹患率および死亡率をともなって驚異的な感染スピードで蔓延することをパンデミックと呼ぶ。

 WHO(世界保健機関)ではパンデミックを大きく4段階で区分している。「前パンデミック期」(フェーズ1〜2)は野鳥や家禽の間でA型の強毒性ウイルス(H5N1)が蔓延するが、「パンデミックアラート期」(フェーズ3〜5)は家禽類からヒトへの感染が確認され、ヒトからヒトへの感染も限定した地域で発生した段階とする。さらに「パンデミック期」(フェーズ6)になるとヒトからヒトへの感染が急速に拡大し、大流行の様相に変化した状態をいう。そしてパンデミック以前の状態に収束したことで「後パンデミック期」とする。

nrinri 鳥インフルエンザの発生国およびヒトへの感染事例(出典:厚生労働省ホームページ)(左)と新型インフルエンザのパンデミックフェーズ(右)。現在はフェーズ3の段階にある(出典:厚生労働省、国立感染症研究所、WHO資料より、NRI作成)

いつパンデミックが発生してもおかしくない

 過去、人類は幾度もパンデミックを経験している。1918年に発生したスペイン風邪(推定死亡者数約4000万〜1億人)や、1957年のアジア風邪(同400万人)、1968年の香港風邪(同400万人)などが世界で猛威を振った。いずれもアジア地域を発生源とし、複数回の波で流行することでわずか半年から1年で世界の社会機能をマヒさせた。

 ウイルスの研究者によると、15〜40年周期でインフルエンザ大流行の発生が指摘されており、特に1977年のロシア風邪から20年を経た1997年に香港で発生したH5N1型の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)では、ヒトへの感染が確認されたことからWHOも警戒し、鳥インフルエンザがいつパンデミックに発展してもおかしくないとして監視体制を強化している。

 ようやく日本でも新型インフルエンザ対策は進められており、2008年7月30日に厚生労働省から示された「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」では、日本での発症者予測は最大3200万人、推定死亡者数は64万人と試算し、パンデミック時の欠勤率を最大40%と想定した。また、2008年11月に内閣府が開催した「新型インフルエンザ対策を話し合う関係省庁会議」では、2005年当時の行動計画を見直し、前段階(未発生)、第1段階(海外で患者が発生)、第2段階(国内発生早期)、第3段階(感染拡大から蔓延、回復へ)、第4段階(患者発生が小康状態)と5段階に修正。各都道府県単位での判断による対策も検討された。

国/機関 発症者数 死亡者数 欠勤率 その他
WHO (先進国の合計として)外来患者:1億3000万人。入院患者:200万人 (先進国の合計として)65万人 アジアのGDPが3%ダウン
米国保健社会福祉省(HHS) 発症者数:9000万人(発症率:30%)。外来患者:4500万人。重度シナリオの場合、入院患者:990万人 重度シナリオの場合、190万人 最大で40% 国外の発生から国内侵入まで数カ月。地域毎に流行の波が複数回発生。1回の流行期間は6〜8週間
英国保健省(DH) 3000万人(発症率:50%) 5万〜75万人(致死率:最大2.5%) 25% 長期的な損失学は145B〜172Bポンド。国外の発生から国内侵入まで2〜4週間。国内侵入から全国拡大まで1〜2週間。・国内侵入からピークまで50日間。1回の流行期間は15週間
日本国厚生労働省 発症者数:3200万人(発症率:25%)。外来患者:最大で2500万人。重度シナリオの場合、入院患者:200万人 重度シナリオの場合、64万人 20%〜40% 国内発生から全国に拡大するまで4週間。国内侵入からピークまで5〜6週間。1回の流行期間は8週間

各国関係機関による新型インフルエンザの被害想定(出典:NRI作成資料より)

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