岐路に立つ政府、いかなる道を進むべきか:生き残れない経営(1/2 ページ)
世間では新自由主義のフリードマンに代わり、再び政府の市場介入を是とするケインズが脚光を浴びている。しかしながら進むべき道を考えたとき、「小さな政府」か「大きな政府」かという二者択一の時代は終わったのである。
米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に端を発した金融危機は世界にまん延し、世界経済は後退から減速へと底知れぬ泥沼に陥りつつある。
未曾有の大不況で消費や投資、雇用が激減し、経営者は氷河期を迎えた経営環境から逃れることはできない。彼らが厳しい環境に対応するには現状を正しく認識するための知識や知恵を身に付ける必要がある。加えて、鋭い洞察力を働かさなければならない。
今、新自由主義の代表格であるミルトン・フリードマンの学説への反省と、政府の市場介入を是とするジョン・メイナード・ケインズの学説の復活が取沙汰されている。「小さな政府」か「大きな政府」か、幸いにしてわたしたちは両者の壮大な実験の中に存在して、身をもって理論と実態を体験できる。今回は、経営環境を正しく把握するための契機として、両理論を実践的に考えるヒントを提供したい。
フリードマン VS ケインズ
両理論を分かりやすく紹介する。フリードマンの主張は、国は個人の自由を守るための仕組みであるため、政府は経済介入するのでなく、個人のルールを守る審判に徹するべきだという。政府の介入は経済全体のパフォーマンスを悪化させる。経済人が合理的判断と完全な情報によって自由に競争することで、経済の均衡が保てるというわけだ。
個人が常に合理的な行動をするとは限らないというのが、ケインズの主張だ。市場メカニズムに任せておくと適切な資源配分ができず、財やサービスの需要不足、失業者の大量発生などを来たす。資本主義経済の安定には、例えば公共事業への投資など、政府が経済に介入して、いろいろな政策を駆使する必要があるとしている。
いずれが正しいのか。歴史を振り返ってみよう。第2次世界大戦後から1970年代まで、ケインズ理論が主流だった。それまでの自由放任主義が世界恐慌を引き起こしたという認識のもとに、大きな政府として国家が経済に積極的に介入し、財政支出によって公共事業を推進し、社会保障を充実させた。
しかし、70年代の石油ショックで財政危機を招き成長は鈍化し、政府の肥大化が批判された。そこで80年代に新自由主義が登場する。
英国における国営企業の民営化や規制緩和、社会保障制度の見直しなどを実行したサッチャーリズム、米国の大幅な規制緩和や減税などを実施したレーガノミックス、その方針を引き継いだビル・クリントン政権などが小さな政府である。日本においても、中曽根政権による鉄道、電話などの民営化、小泉政権による構造改革、規制緩和などの政策が記憶に新しい。
その新自由主義は今回破たんした。日本においては、ワーキングプアの問題や地方衰退の格差をもたらし、社会的動揺を引き起こしたと批判されている。再び経済への政府介入へとかじが切られる。
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