システム開発における「選択と集中」が加速:野村総合研究所調べ
システム開発における目下の課題を「コスト削減」をとらえる企業の割合が突出している。こうした企業は、投資対象の「選択と集中」や内製化の促進など、従来のシステム開発の工程を積極的に変えようとしている。
システム開発における目下の課題は、コスト削減と人的資源が中心になっていることが、野村総合研究所の調査で明らかになった。システム開発では、開発量や外注によるコスト削減にも増して、費用対効果が求められる傾向にある。また、情報システム部門の人材不足や人材育成の遅れ、ノウハウや方法論の共有などにも課題を残している。
勤務先、顧客企業にIT関連で力を入れる分野を聞いたところ、「コスト削減」が61.4%でトップ。次いで「業務プロセスの統合/改善」(42.4%)、「セキュリティ対策の強化」(39.3%)が挙がった。コスト削減に対する要望が突出している。
一方、「社員のITリテラシーの向上」(9.3%)や「システム部員に対する教育」(7.9%)など、人的資源関連は重点分野になっていない。
検討および実施しているコスト削減対策は、「IT投資の選択と集中」が58.9%で過半数を占めた。「外注システム開発量の削減」(45.7%)、「内製化の促進」(33.8%)が続くなど、費用対効果を意識したシステム開発工程の構造改革を進めている様子がうかがえる。システムの運用効率を向上させる手法として仮想化やクラウドコンピューティングに注目が集まっているが、「システムの仮想環境への移行」は25.1%、「オンデマンドサービスの活用」は11.6%にとどまるなど、コスト削減手法の主流にはなっていない。
システム開発における勤務先、顧客企業の課題として回答の割合が高かったのは、「組織的な蓄積・活用が不十分」(53.7%)、「情報システム要員の人材育成の遅れ」(49.0%)、「情報システム要員の不足」(47.3%)。システム開発におけるノウハウの共有や人員そのものの不足が目立っている。
野村総合研究所はシステム基盤サービスの課題と動向の把握を目的に、従業員500人以上の企業の社内向け情報システム部門、従業員100人以上の企業の社外向け情報システム部門担当者に調査を実施。3月5日から10日にインターネット経由でアンケートを取り、674件の有効回答数を集めた。
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