「足かせ」扱いの情シス、IT予算減の今こそ熟考の時:Gartner Column(2/3 ページ)
情報システムの役割が、もつれたビジネスプロセスをほぐすだけでは力不足です。IT予算が大幅に削減されている今こそ、改めて情報システムの存在意義を考えて直してみましょう。
会計システムを例に挙げてみましょう。会計は企業のさまざまなビジネスプロセスと密接に関係しています。例えば「受注から請求」「財務報告」「サプライチェーン」「契約管理」のプロセスなどがあり、数えればキリがありません。しかし、会計システムがこうした数々のプロセスをすべて想定して設計・構築されることはまずありません。会計システムに必要な機能を定義して、設計・構築されています。
しかし、実態として情報システムは、ビジネスプロセスを実装するために存在しています。実際にプロセスを実行する中で、情報システムに入出力したデータを基に、業務を処理していくのは明らかです。
図1をご覧ください。エンドツーエンドのビジネスプロセスの一つ一つから、機能別に構築されたアプリケーションにアクセスしていることをモデル化したものです。線が網目状に飛び交い、とても複雑になっています。企業内のビジネスプロセスと情報システムの関係は、ほぼこのような状況に等しいといえます。
情報システムが無ければ、業務自体は進みません。しかし情報システムは、社内のビジネスプロセスを実装しているという状態からはほど遠く、単純に処理機能を提供しているという状態にすぎません。
経営者の多くは、この状況をどう考えるでしょうか。「システムは業務を機械化して合理化・効率化するためにある」と考えます。21世紀の現代において、本当に機械化しなければならない事務業務を機械化できていない企業は少ないです。そうすると、不景気時には情報システムへの投資が不要不急の対象になってしまいます。
表1は、2008年末に実施した「2009年EXP CIOサーベイ」の結果を集計したものです。この設問は、毎年CIOに尋ねていますが、「あなたのビジネス面での優先課題は何ですか?」という問いに対して回答の多いものから順にランキングとしてまとめたものです。
この表は、過去のトレンドが分かるように、2006年からの結果を掲載しています。2009年の第1位は、ビジネスプロセスの改善です。これは2006年から不動です。CIOは、ビジネスプロセスの改善がビジネス面における自身の最優先事項であると、5年間も連続して考えているのです。
そしてビジネス面での優先事項を、企業の経営者からCIOに対する期待事項であると考えてみましょう。この結果はすなわち、5年連続で「CIOはビジネスプロセスの改善に注力してほしい」と言われ続けていることになります。
CIOがこの課題に一歩踏み出し、自らがリーダーとなってビジネスプロセスの改善に取り組んでいると回答した割合は、全世界では30%にも上りました。驚くことに日本のCIOはこの割合が45%に達したのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.