「スマートな働き方」の根底を支えるコラボレーション――IBM:Working Smarter Forum 2009 リポート
企業の存続の舵取り役を担うのは、そこで働く「人」である。従業員が業務において最大限の成果を発揮するために、IBMはコラボレーションの推進を優先すべきだと強調する。
「開発する製品やサービスの差別化に必要な人的資源には、大きな投資をしないといけない」――。米IBMでLotusソフトウェア サービス担当VPを務めるジョン・アレシオ氏は、日本アイ・ビー・エム(IBM)が9月8日に開催したLotus Software関連のイベント「Working Smarter Forum 2009」の基調講演でこう強調した。2008年までは「Lotus Day」と銘打っていた同イベントの装いを新たにしたIBM。同イベントでは働き方の変化とコラボレーション(協同作業)の重要性について繰り返し言及した。
「1年で20億人がインターネットにアクセスし、40億人が携帯電話を持っている」(アレシオ氏)。IT分野におけるこうした進化は、「いつでもどこでも仕事をするのが現実」(同氏)という働き方をもたらした。企業内においては、蓄積した大量の情報から必要なものを素早く取り出したり、過去の成功事例やアイデアを社内でどう共有したりするにはどうすればいいかという課題が生じた。
企業の経営層や現場のリーダーは、働き方や職場環境の変化に対応しながら、業務の生産性を高めていくという命題に直面している。業務効率の改善やコスト削減という題目はもちろんのこと、売り上げや顧客満足度の日々の変化といった細部にまで十分に気を配らなければならなくなっている。
IBMが今回のイベントで強調していたのは、「スマートな働き方」というコンセプトだ。これは人を活用し、グローバル規模で業務を実行する体制を整えることを指す。こうした働き方を実現するには「コラボレーション」が大切になる、とアレシオ氏は言う。
IBMが世界各国で実施した調査「IBM 2008 CEO Study」では、実に71%ものCEO(最高経営責任者)が「コラボレーション」に注目していると答えた。米調査会社のGartnerやForrester Researchでも優先すべき投資課題として、コラボレーションを挙げているとアレシオ氏は続ける。
コラボレーションに率先して取り組んでいるのはIBM自身だ。例えば同社は社内で「BluePages」と呼ぶ電話帳ツールを使っている。これは各従業員の名前、電話番号、手掛けたプロジェクトや経歴を社員ごとにまとめ、Web上で検索できるツールだ。BluePagesにより「世界中から業務やアイデアに対する問い合わせがくる」(執行役員 開発製造 スマーター・プラネット技術推進担当 丸山宏氏)土台を整備した。グローバル規模でビジネスを展開する企業にとって、顧客への提案や業務の進行で成果を出すために、誰が課題解決を導くキーパーソンになるのかを、社内で共有しておくことは必須だ。
また全社員がオンライン上で議論を行う「Innovation Jam」という取り組みも継続している。2008年の開催時には、PLM(製品ライフサイクル管理)やSCM(サプライチェーンマネジメント)などプロセスに、Web2.0の仕組みを導入するというアイデアが生まれた。これは製品の価値を高めるために、開発のプロセスで顧客の声を取り入れたいという要望が多数あったからだという。Innovation Jam 2008における意見の投稿数は3万に上ったという。
丸山氏は「この取り組み(ブレインストーミング)で多数の人によって繰り返し言及されたことがイノベーションの根底になる」と話す。Lotusのソフトウェアが提供するコラボレーションツールを使うことで社員の自由な働き方を推奨し、大衆の知恵を企業の利益、さらにはイノベーションへとつなげている。
ソフトウェア事業 Lotus事業部長の三浦美穂氏は「国内外の企業は、ビジネス上の課題として人を介した事業の改善を求めている」と話す。これをIBMは「コラボレーションの改善と推進」によって打ち破ろうとしている。その根底にあるのは、人材を有効活用することで利益を最大化できるという考え方だ。
「今の組織は必要に応じて変化できますか? また組織の内外を問わず人と資産を最適に活用できますか?」――。アレシオ氏は基調講演の参加者にこう呼び掛け、降壇した。これは企業が今後克服すべき喫緊の課題とも言い換えられるだろう。
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