「コスト削減時代」に企業が本当にすべきこと:Gartner Column(1/4 ページ)
未曾有の不景気によって、経営に自信を失う経営者が増えています。コスト削減という名目のもと、支出を減らそうとする企業も見受けられますが、それが正しい経営方針といえるのでしょうか。この時代にCIOやIT部門が着手すべきことについて、ガートナーが実施した調査を基に考察します。
サブプライムローン破たんから始まった金融危機によって、多くの経営者が経営に対する自信を失っています。「コスト削減」という名目のもと、支出を抑えることだけに躍起になる企業も見受けられますが、それは本当に正しい経営方針でしょうか。
ガートナーでは、2008年の10月中旬から12月の中旬まで「CIO アンケート調査 2009」を実施しました。この調査は全世界から1526人(国内61人)のCIO(最高情報責任者)から回答を集めました。回答したCIOが管理するIT予算は、1380億ドル(約13兆円)に上ります。また、国内61人のCIOでは合計1兆6000億円の予算を管理しており、1人当たり約260億円程度になります。
今回の調査では「CIOの優先するビジネス課題」「CIOの戦略」「優先するテクノロジー」「IT予算」など例年のテーマを調査するとともに、特に「企業が目標達成をする能力を高める要因」という調査に注力しました。それぞれの調査結果を振り返り、企業が今直面しているビジネス上の課題を明らかにすることで、CIOや企業のIT部門が今こそやらなければいけないことを2回に分けて検証します。
CIOの優先するビジネス課題
まずは「CIOの優先するビジネス課題」について見ていきましょう。表1は、全世界・全業種のCIOが優先課題のトップ5の1つとして選択したビジネスにおける課題のランキングです。1位は、4年連続で「ビジネスプロセスを改善する」となりました。このテーマは2005年も1位で、実は5年連続で1位となっています。
ビジネス上の課題として優先すべきことは、CIOの上司であるCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)、場合によってはCOO(最高執行責任者)などから「優先的にこの課題に対処してほしい」と言われていることと同義であり、企業全体として取り組むべき優先課題とも言い換えられます。
2位は「企業コストを削減する」になりました。経営トップは、CIOに対してITコストだけでなく、企業全体のオペレーションコストの削減に期待を寄せています。2008年の5位からの急上昇は、不透明な経済状況を反映した結果といえるでしょう。
3位は「要員の業務効率を改善する」でした。2008年は6位、2007年は4位ですから、今年は優先度がいっそう上がりました。これも昨今の経済状況を受けた結果といえるでしょう。
2008年の2位は「新規顧客を獲得し維持する」、第3位は「新商品や新サービスを開発する(イノベーション)」だったことから、ビジネス上の課題に対する企業の優先度は、企業の運営の効率化や合理化に転換したように見えます。現下の経済状況では、こうした急激な変化もやむを得ないとみるべきです。
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