「コスト削減時代」に企業が本当にすべきこと:Gartner Column(3/4 ページ)
未曾有の不景気によって、経営に自信を失う経営者が増えています。コスト削減という名目のもと、支出を減らそうとする企業も見受けられますが、それが正しい経営方針といえるのでしょうか。この時代にCIOやIT部門が着手すべきことについて、ガートナーが実施した調査を基に考察します。
CIOの戦略
次は、表3「CIOの戦略」のランキングを見てみましょう。注目すべきは、2009年に2位にランクインした「ITコストを削減する」という項目です。2008年より前はベスト10にも入っていなかったコスト削減が急上昇しています。世界同時不況のまっただ中では、当然の結果といえるでしょう。
今年の第1位は、万年第2位だった「ビジネス戦略とIT戦略およびビジネス計画とIT計画の一体化を促進する」でした。この背景には、ITを価値ある経営資源の1つと考えない経営者達が、先行き不透明な経済状況の中でIT支出の削減を求めてきたことによるでしょう。もともと、ITを価値ある経営資源と考えている経営トップや、ITのビジネス価値を適切に説明できるCIOは少ないです。こうした状況もランキングに反映されているとみることができます。
CIOの戦略において3年間トップの座を守り抜いた「ビジネスの成長を支援するプロジェクトを実行する」という項目が、今年は第3位に転落してしまいました。現在の経済状況を反映して、「今は、成長することよりも生き延びること」に舵を切る経営者の思いが切実に現れています。
世界と日本でCIOの戦略にどんな差があるか
表4は、全世界と日本のCIOの戦略ランキングを比較したものです。主な違いは、日本で2位の「有能なIT要員を獲得し、能力開発を図り、定着させる」という項目が、世界では8位だったことです。要員をコストと考える傾向がある海外では、IT部門のコスト削減について、要員の異動やレイオフ(解雇)をすることで対処するという考え方が強いため、世界と日本で差が開いてしまいました。
日本では海外ほど簡単にレイオフできないこともあり、「ならば、しっかりと教育しよう」という考え方がランキングに現れています。しかし実際には、どのような能力を開発すべきか日々悩んでいるCIOがたくさんいます。IT関連の予算が凍結したことで、開発案件などがなくなり、結果として費用の掛からない社内勉強を進めたという回答者も多いのではないでしょうか。
実はガートナーには年初から、「次世代に主流となるプログラミング言語は何ですか?」という問い合わせが多数届きました。なぜこうした質問が多いのか。それは「プロジェクトが凍結し、時間を持て余しているので、プログラミングの勉強でもさせようかと思っている」というCIOやIT部門の管理職が多かったからです。
この経済不況の中、経営トップは自分達のリーダーシップに自信を無くしています。その結果、闇雲にキャッシュアウトを削っているかのように見えます。それ以上にまずいのはCIOの態度です。予算を削られたために、プログラミングの勉強をさせようとしているのですから。要員達はたまったものではありません。
学習自体は無駄にはならないため、学習させる行為自体を非難するつもりはありません。ですが、どのような能力を開発するかについては、真面目に考えた方がいいでしょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.