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会話力つい踏んでしまうプレゼン失敗の地雷(1/3 ページ)

とにかく話術に長けていて社内外のプレゼンに引っ張りだこ。皆さんの回りにもそうしたビジネスリーダーがいるはずです。しかし、話し上手だからといって必ずしもプレゼンが成功するほど甘くはありません。

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 何をやらせても一枚上手、あの人には絶対かなわない。そんな頼もしいビジネスリーダーはどこの会社にもいるものです。「部長はとにかく話がうまくて、どんなお客さんでもその気にさせてしまう」「プロジェクトリーダーの企画書はいつも完璧、提案も裏付けデータも文句なくて、パワポのテクもすごい」「課長は、知識や経験が豊富で、いつも誰かが相談にきている」――できるリーダーは、社内でも社外でも一目置かれる存在です。

 その真価が遺憾なく発揮されるのは、ビジネスシーンで日々繰り広げられるプレゼンテーションでしょう。大きなプレゼンになればなるほど、できるリーダーの腕の見せ所です。しかしながら、プレゼンは甘いものではありません。優れたリーダーでさえ、1度や2度の失敗をしているものです。実はプレゼンには、どんな辣腕リーダーでも、その優秀さ故に、つい踏んでしまう地雷がたくさん埋まっているのです。そして困ったことに、リーダーたちは地雷を踏んでしまったことに気付いていないのです。

 わたしはリクルート在籍時、「とらばーゆ」編集長や求人広告のクリエイティブディレクターなどを担当してきましたが、現場では毎日がプレゼンの連続でした。その中で、まさかこの人が、というリーダーが地雷を踏んでしまった瞬間を多数目撃してきました。実は自分が踏んだ地雷の数もかなりのものです。苦い経験ですが、そこから学んだことが無数にあり、今の糧となっています。

 今回から5回にわたり、書店に並ぶ多数のハウツー本には書いてないようなプレゼンのワナについて、具体的に紹介していきます。

聴衆を引き込むトーク力

 できるリーダーには、相手を説得できる会話力があります。「ウチの部長はとにかく話が上手。どんなお客さんでも、ついその気にさせてしまう」。そんなやり手が皆さんの会社にもいませんか。重要な商談や大きなコンペには、必ず登場してプレゼン役をこなします。あの人に任せれば大丈夫だと、誰もが全幅の信頼を寄せています。相手を魅了する話し方、豊富な話題、相手の懐に飛び込む力強さなど、話上手な人はプレゼンでも大活躍しているはずです。

 先日、元阪神タイガースのエースで参議院議員でもあった江本孟紀さんの講演を伺う機会がありました。スポーツと健康をテーマにした講演でしたが、これが実におもしろかった。プロ野球界の裏事情もよく知っている江本さんの話はサプライズの連発。また実体験に基づいた話題には、とても説得力があり、聞いている聴衆をグイグイ引き込んでいきました。

 江本さんのように、話術に長け話題も豊富なビジネスリーダーは、どこの会社、どこの組織にもいます。話が上手な人というのは、相手の気持ちをつかむツボを知っています。これは一朝一夕に身に付く能力ではありません。だからこそプレゼンでも引っ張りだこな、頼りになるリーダーなのです。

「エンターテナー」の異名をとるトップ営業マン

 わたしがリクルートに在籍していた当時、「スーツのエンターテナー」という異名をとった辣腕営業のY君がいました。彼は営業セクションのリーダーとしてメンバーを引っ張るかたわら、強烈なキャラとセールストークで顧客を開拓する活躍ぶりでした。大学時代に落研(落語研究会)に所属し、人を笑わせる術を身に付けたY君は、独特の話術でお客さんの懐に飛び込み、何度もトップセールスを記録していきました。

 わたしが広告ディレクターだったころには、彼と何度も組んでいろんな顧客に提案をしてきました。ある日、彼とともに繊維関係の商社に新卒採用広告のプレゼンに出向いた時のことです。同じ業界の顧客を何社も開拓していたY君は、豊富な事例を元にプレゼンを組み立てていました。社長にお会いするのは初めてでしたが、すでに担当の課長とは何度も打ち合わせを重ねており、準備にぬかりはありません。

 わたしも彼のプランに沿って採用広告の展開案を作成しました。なかなかの力作が出来上がり、2人で元気に社長を訪ねました。プレゼンでは、Y君の立てたシナリオ通り、ケーススタディを元に流れるようなトークで企画を提案しました。Y君は毎度の調子で、時折笑いを織り交ぜ、社長もノリノリで進行。最後は握手でプレゼンを終え、意気揚々と引き上げてきました。

 数日後、その課長から連絡が入ります。当然OKの返事をもらえるものだと思っていたのですが、答えは何とノー。聞けば他社に注文したというのです。

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