「消費者をファンにするマーケティングを」――ローソンエンターメディア 日比靖浩社長:【対談連載】石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(1/3 ページ)
好調なチケット販売業界において、ぴあに次ぐ業界2位の売り上げ規模をほこるローソンエンターメディア。マイケル・ジャクソンの映画チケット販売の工夫など消費者の心をつかむマーケティング戦略を聞きました。
エンターテインメント産業は不況に強いと言われます。ハリウッドの映画産業は大恐慌時代に、安価な娯楽として人々の間に浸透し成長しました。今回の不況の一人勝ち(二人勝ち?)は、ゲームとホームビデオ。ホリデーシーズンに家族旅行に行くことを考えれば、家庭内娯楽の方が安く人気だったようです。
さて、日本では? 家庭内娯楽にとどまらず、現在、約2000億円という市場規模のチケット業界が好調です。ぴあ、ローソンエンターメディア、エンタテイメントプラス、CNプレイガイドの大手4社の合計が昨年対比で伸びています。例えば、ローソンエンターメディアのチケット取扱高は、2009年度2月期は730億円と前年の21.2%増となり、営業収入も69億6000万円から76億2000万円にと、コンサートや演劇などに消費者の嗜好は強かったようです。
今回の対談では、ローソンエンターメディアのマーケティング本部長から今年5月に代表取締役社長に就任した日比靖浩さんがユニークな顧客接点を持つ同社の強みと成長戦略を語ってくれました。ユニークなのは、会社だけでなく、ご本人も。興行や野外コンサートにも自ら足を運んで培う日比さんのマーケティングの勘所をふんだんに楽しんでもらいたいと思います。
チケット販売はプラットフォーム事業
ローソンエンターメディアは、今年7月にローソンチケットから会社名を変更、3月にアイ・コンビニエンスと合併し、チケット事業からEコマース事業と広告マーケディング事業、サイト制作、運営事業へと事業領域を拡大しています。
競合との差異化では、全国のローソンに設置されているチケット端末「Loppi」でチケットの購買をできるのが特徴です。ほかのコンビニエンスストアもこのシステムに追随していますが、ローソンが先行したことで、ローソンに行くとチケットが買えるというブランドイメージが消費者の間に浸透しています。歴史的に見ると、最初のチケット販売は電話やプレイガイドでしたが、1990年代にインターネットの採用と同時期にLoppiを導入、当時はインターネットがまだナローバンドだったために、Loppiが売り上げで先行しました。
最近では携帯を含むインターネットでの購買が増え、チケット販売の割合は、電話3割、Loppi4割、インターネット3割になってきたようです。いわば、豊富な顧客接点を提供するプラットフォームを強みにしていると言えるでしょう。
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