知識と創意を集約した庭:SFC ORF2009 Report
SFCの研究成果を発表する年次イベント「SFC ORF2009」が開幕した。会場では日本でも利用者数を急速に伸ばしているTwitterを活用した仕掛けなど、目新しい取り組みが紹介された。
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)は11月23日、学生や教員の研究成果を一般公開する「慶應義塾大学 SFC Open Research Forum 2009(ORF2009)」を開催した。今年のテーマは「Gardens for Ingenuity(創意の庭) ―断面の触感―」。SFCが来年で創設20年を迎えることにより、これまで積み重ねられてきた知識と創意を1つの庭としてとらえ、改めて回遊することの重要性がテーマに込められている。
会場である六本木アカデミーヒルズ40の一角に設けられた展示スペース「ORF ガーデン」では、さながら未知への実験室といった形で目新しい取り組みがなされていた。その代表例がTwitterの活用だ。ORF2009の盛り上がりを視覚化するWebプロジェクト「ORF SIGHT」は、Twitterを通して展示者や参加者から集められたつぶやきに反応してORFの公式Webサイト上にセッションや研究会ブースごとに分類された「草」が育ち、リアルタイムで庭が変化していくというもの。入口脇に用意されたディスプレイでもその様子が映し出されており、来場者は今注目度の高い研究会ブースは何かを一目で認識できる。
イベントの案内図「ORF-Navi」では、会場の領域ごとに円形の土台を用意し、そこで実施しているセッションや展示ブースにひも付いたiPod touchを設置して、ブースの情報や会場のあちこちで噴出するつぶやきを表示し、会場全体を俯瞰できるようにした。
そのほか、自動運転/遠隔操縦技術を活用した電気自動車によって、子どもから高齢者まですべての住民が自由かつ安全に移動できる街づくりの構想や、農業とITの連携による高付加価値商品の開発や地域活性化への取り組みなど、少子高齢化や農業人口の減少といった日本社会が抱える諸問題の解決に向けた研究も紹介された。
ORF2009の実行委員長を務める同大学 環境情報学部の小川克彦教授は「企業の展示会であれば実現化寸前の製品などが登場するが、ORFでは毎年α版やβ版のような試作段階の研究が惜しみなく紹介されており、新しい発想やアイデアに次々と触れることができる」と意義を語った。
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