コスト削減よりも売り上げ増に注力――変わるIT投資動向:ITmedia リサーチインタラクティブ 第4回調査(2/2 ページ)
ITmedia エンタープライズとITRは企業のIT投資動向をテーマにした読者調査を2009年12月に実施した。IT投資の重点課題では「売り上げの増加」が「コスト削減」を上回るなど、企業が守りから攻めの投資意欲を高めている傾向が見て取れた。
アプリ、インフラ、開発・運用の重点投資分野
2010年度のIT投資の重点分野を、「アプリケーション」「インフラ」「開発・運用」という3つの軸で聞いた。
アプリケーション
営業活動や顧客関係管理のアプリケーションに対する投資意欲が高い。具体的には「販売支援・営業支援」(32.7%)、「文書・コンテンツ管理」(26.9%)、「販売管理」(26.3%)がトップ3だった。一方、「管理会計」「財務会計」「人事・給与」といったバックオフィス業務向けアプリケーションへの投資意欲は低い。2010年度は、企業の売り上げに直接貢献するアプリケーションへの投資が進む傾向になる。
インフラ
2009年度と比べた投資意欲を聞いたインフラ分野では、投資を考えている目立った分野は少ない。「データセキュリティ(暗号化など)」「クライアントPC」「ストレージ(NAS・SAN)」において、ほかのインフラ分野よりもやや旺盛な投資意欲がみられた。
サーバでは大型(5000万円以上)/中型(500万円以上)のサーバへの投資予算が減少しており、投資計画がないと答えた企業も多い。IT投資における重点課題の1つとして挙がっていたインフラの統合・最適化を導く「データ統合ツール(MDM/ETL)」「SOA関連ツール(ESB/EAI)」も、6割超の企業が投資する計画はないと答えている。
開発・運用
開発・運用領域では、「外部データセンター利用」「運用の外部委託」「開発の外部委託」というアウトソーシング関連への投資が、2009年度に比べてやや増える見通しだ。
コスト削減策の実施・計画の状況
2009年度に実施したコスト削減の施策では、「不要なハードウェアの廃棄など、配置面での整理」が3割超となり、最も多かった。「ハードウェア(サーバ、ストレージなど)の統合・仮想化による整理」を進めた企業は22.3%だったが、その準備としてハードウェアの廃棄を進めたとみられる。
ベンダーとの関係に依存するコスト削減策では、「開発・運用の内製化」(21.7%)、「既存契約の内容・条件の見直し」(25.6%)が高い。IT投資の延期を表す「新規ITプロジェクト予算の凍結」も24.1%となり、大規模なコスト削減も進んだ。
2009年のIT投資動向を見ると、前年よりも一層厳しい投資を強いられている企業が多い。重点課題とされる投資分野では売り上げに関連する攻めの投資を考える企業が出始めていることが明らかになった。
ITmedia リサーチインタラクティブでは2月5日まで、第5回読者調査「コラボレーション/コミュニケーションツール」を実施しています。2010年はメールシステムの入れ替えが起こるのか、情報系アプリケーションにおけるSaaSの活用は広がるかといったトピックを、皆さまの意見から明らかにします。回答ページはこちらをクリック。
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