経営コックピットで全社的なBSC経営を推進するカルビー:ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)
カルビーの元社長兼CEOの中田氏は、カルビーのバランスト・スコアカード経営の概要と、その実践に向けたITの重要性について語った。
経営の見える化を通じてBSCの活用を推進
「やめられない、とまらない」――30代も半ばを超える年代であれば、これが「かっぱえびせん」のCMソングであることはすぐに理解できるだろう。カルビーは1964年に発売した同商品を大ヒットさせて以来、「ポテトチップ」や「フルーツグラノーラ」、「じゃがりこ」など、10年おきに画期的な新商品を発表した。それらをロングライフ商品に育てることで、スナック食品のリーディングカンパニーの地位を築いてきた。
2009年6月には、世界最大の食品飲料メーカーである米ペプシコの全額出資子会社「ジャパンフリトレー」の買収を発表。「ドリトス」などトウモロコシを材料とする商品で強みを持つジャパンフリトレーを傘下に加えることで、ポテト関連商品の割合が70%を超える同社が新た成長軌道を描くための基盤も整えた。
同社の相談役で、元社長兼CEOの中田康雄氏によると、同社ではバランスト・スコアカード(BSC)を経営に積極活用してきたという。中田氏は「BSCを用いて立てた仮説を検証するためには、経営の見える化を図ることが不可欠。ITはそのための欠かせないツールに位置付けられるのだ」と述べ、同社が実践してきたIT戦略のポイントについて解説した。
マトリックス型組織でエリアごとに最適な提案を
中田氏によると、カルビーでは東日本や東京などの商圏ごとに地域カンパニーを組織。併せて「ポテトチップ」や「じゃがりこ」など商品ごとに組織された社内カンパニーで地域カンパニーの横串を刺すという、いわゆるマトリクス型の組織体制が採用されている。その狙いは、自律的に運営できる組織の実現にあるという。
「マトリクス型の組織であれば、地域カンパニーと商品カンパニーが共同で、エリアごとに最適な商品提案を迅速に行うことが可能になる。当社ではCEOをトップに戦略的なビジネスユニット、その下に品質管理ユニットを置く3層構造のシンプルなマネジメント手法を採用しているが、それも経営の意思決定を迅速に現場に反映するためなのだ」(中田氏)
こうした体制の下、カルビーは経営理念の中核に「社員価値の向上」を据え、「真の顧客本位」、「感動のマーケティング」、「信頼の生産、物流システム」の実践に取り組んできた。その結果、同社にもたらされたのがイノベーションの連鎖なのだという。端的に説明すれば、顧客本位の企業経営を実現するために、鮮度管理の徹底などを通じた商品価値を向上させる「バリューイノベーション」がもたらされる。それを受け、商品を顧客に最適な形で届けるための生産・流通システムの見直しが進められ、「プロセスイノベーション」の具現化、さらには新商品などに対する顧客の評価が社員の「マインドイノベーション」につながるわけだ。
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