無料化するクラウド、潜む落とし穴:戦略コンサルタントの視点(3/3 ページ)
戦略コンサルティングファーム独ローランド・ベルガーに、情報システムの新たな姿について寄稿してもらう。4回目は、クラウドコンピューティングの落とし穴について解説する。
リスクとメリットはトレードオフ
割り切って、情報のタコつぼ化をある程度許容し、「早い利用開始」を取るか、「一元化された情報の維持」を取るかは企業の戦略によりますので、どちらが正しいとは一概には言えません。
1990年代半ばからのERPの採用は「一元化された情報」の整備という面があったわけですが、クラウドの採用はこの15年の時間と投資による一定の成果を崩すリスクをはらんでいることを、経営側は強く認識しておくことが必要です。
自部門のシステム化を急ぎたい利用部門と、一日も早く課金を開始したいクラウドベンダー、この両者が「早い利用開始」よりも「一元化された情報の維持」に高い優先度を設定することを期待するのは、やや性善説に寄りすぎた判断であるかもしれません。
次回以降では、クラウド適用によるベンダーロックインのリスクとクラウドの無料化の流れについて解説したうえで、クラウドの適切な活用の仕方について考えてきたいと思います。
ローランド・ベルガーはドイツを起源に、高度なプロフェッショナルサービスを展開する戦略コンサルティング・ファームです。設立以来40年以上にわたり、自動車や消費財などの製造業、金融、流通、通信・情報技術などのサービス業においてグローバルな視点でのコンサルティングサービスを提供しています。
著者プロフィール:大野 隆司(おおの りゅうじ) 株式会社ローランド・ベルガー パートナー
早稲田大学政治経済学部卒業後、米国系戦略コンサルティングファーム、米国系総合コンサルティング・ファーム、米国系ITコンサルティング・ファームを経て現職。電機、建設機械、化学、総合商社、銀行など幅広い業界の大手企業において、事業戦略、オペレーション戦略、IT戦略の策定などを手掛ける。
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