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インドでのレスリング選手権にて小松裕の「スポーツドクター奮闘記」(1/2 ページ)

腹痛などの体調不良者が必ず出るため、インドで開催したレスリング・アジア選手権へ内科医として帯同しました。今回も多くのことを学ぶ機会に恵まれました。

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 今回のコラムは、日本に帰国する飛行機の中で書いています。インドのニューデリーにおいて、5月12日〜16日の日程でレスリングのアジア選手権が開催され、チームドクターとして帯同しました。男子フリー、グレコローマン、女子でそれぞれ7階級、21人の選手が出場し、連日気合の入った熱戦が繰り広げられました。フリーでメダル4つ、グレコでメダル1つ、女子は全員メダルを獲得し、合計で金2、銀4、銅6という結果でした。詳細は日本レスリング協会のホームページをご覧ください。

 2カ月前、日本レスリング協会の医科学委員会の席上において、「下痢する選手が必ず出るインドはやっぱり内科医が必要でしょう」という師匠・増島篤委員長の一声で、わたしが帯同することに決まりました。滞在中の1週間、いろいろなことがありました。そして今、この原稿を書いているわたしのおなかはグルグル鳴っています。通路側の席で助かりました。成田に着くまで何回トイレに行くことになるのだろう……。

チームドクターの一日

 読者の皆さんは、チームドクターが毎日何をしているのかイメージがわかないと思います。そこで、大会期間中のわたしのある一日を再現しましょう。

 朝7時に起床し、今大会の団長であるモントリオールの金メダリスト・高田裕司さんとホテルの隣の公園を散歩します。前の晩、「先生、明日の朝一緒に散歩しようよ」お誘いを受けました。「今日も遅くなるだろうし、明日はゆっくり寝たいなぁ」と思いつつ、「オトモイタシマス」と直ちに答えたわたし。選手はもちろん、スタッフや協会の重鎮たちとのコミュニケーションはこの仕事をする上でとても大事だからです。朝7時といえども、ニューデリーはすでに30度を超えています(ちなみに、その前日の最高気温は43度でした)。

 ペットボトルを片手に水分補給しながら散歩して、シャワーを浴びてから朝食です。きちんとしたホテルですが、すでに下痢や発熱の選手が数人出ているため、選手たちが変なものを食べていないか気を配ります。部屋(トレーナーとの2人部屋)に戻り、仕事のメールを確認している間に、選手が2人、生理痛や風邪の症状で部屋にやってきました。

 午前11時にパトカーが先導するバスに乗り込みホテルを出発し、約30分で試合会場に到着しました。ウォームアップ会場に入り、選手たちは試合に向けてアップを開始します。試合が始まるまでの間は「ちょっとおなかが痛いんですけれど…」と訴えてきた選手に対応し、試合中はリングサイドで応援しながら、不測の事態に備えます。

 午後5時には、翌日の試合のための計量やメディカルチェックにやってきた選手たちに対応します。試合前のメディカルチェックというのは、試合で相手に感染させる恐れのある皮膚感染症などがないかどうか、大会のドクターがチェックするのですが、何かいちゃもんをつけられたときにはわたしが出て行き、問題ないことを証明するのです。

 午後6時からは決勝トーナメントが始まり、表彰式の後はドーピング検査の対象となった選手に付き添います。検査員の言葉を通訳し、ドーピング検査室で選手の権利がきちんと守られているかにも気を配ります。検査が終了して、バスに乗り込み、ホテルに着いたのが午後10時。それから食事をして、シャワーを浴びて、マッサージを受けている選手たちと雑談して、深夜2時くらいに就寝します。帯同時は大体このような毎日です。

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