検索
ニュース

IT「あたま」を丸くしようGartner Column(2/3 ページ)

今回はいつもと少し趣向を変えて「ITコスト削減策」検討の際に重要なことを、皆様に思い出していただくために、ある企業の事例をお話ししましょう。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

 わたしはこう言いました。「IT費用の総額は、同業他社と比べても圧倒的に少ないと思います。ただ、少ないというのは2種類あります。1つは、とても上手にIT投資が出来ていて、やるべきこと(IT化すべきこと)はやっている(IT化している)場合と、もう1つは、やるべきことをやらないで、ただ費用を圧縮している場合とが考えられます。貴社は、前者、後者のうちのどちらでしょうか」

 彼は、大きなため息をついてから、わたしにこう答えました。「わたしが、コスト削減方法を尋ねているのに、逆に質問ですか?」と。そこで、わたしはさらにこう続けました。「貴社にとってITとは何でしょうか。難しいようでした、こう言い換えても良いと思います。貴社はITに何を期待されているのでしょうか」

 彼は、そんなことわかりきっていると言わんばかりに即座に「当社にとってITは、安ければ安いほうが良いのです。冒頭に申し上げた通り、当社の各部が、毎日々コストを削減・・・・・・」と始まったので「承知しました。安ければ安い方が良いというのが、貴社にとってのITへの期待ならば、手を打つ方法があります。しかもとっておきの良い方法です」とお答えしました。「おぉ!さすがガートナーですね。して、それは何ですか?」と身を乗り出してこられました。わたしは、ゆっくりと言葉を話しました。

 「全ての稼働中の情報システムを止めて、人員は、あなたも含めて、全員、異動若しくはリストラして、帳簿に残る固定資産は、全て廃棄してください。そうすれば、IT費用はゼロになります。あなたは、Mission successful complete で、経営トップから褒められるに違いありません」と。

 「あなたは、わたしを怒らせにここに来られたのですか?」とお聞きになるので、「いいえ、そんなつもりはありません。しかし、ITは安ければ安い方が良いとおっしゃったのは、貴方です。そして、そこに何も条件はありませんでした。いえいえ、けんかを売りに来た訳ではありません。では、本論をお話しましょう。ITが、自社の何に貢献しなければならないかは、企業によって様々ですから、そこにわたしどもから提示する正解はありません。

 しかし、IT費用を削減するためにITやIT組織が存在することはありえません(もし、そうならば、前述の通りITを全て止めれば良いのです)。失礼ながら、あなたからのご質問を聞いておりましたら、IT部門長である貴方がITの存在価値をご自身で否定されているような発言で、わたしは、たいへん心苦しかったのです。ご理解いただけますか」

 さらにこう続けました。「貴社のIT費用は、売上高に対して約0.3%程度です。一方で、貴社の一般管理費(Operation Cost)は、売上高の30%程度です。少し考えて見ましょう。IT費用は、凄く頑張って現状よりも仮に1割ダウンさせることが出来たとしましょう。それは売上高に比べると0.03%ということです。一方で、Operation Costは、少し頑張って1%ダウンさせることができたら、売上げの3%ものコストダウンが図れます。

 なんと100倍も効果が違います。わたしが思うに、貴社のITコストを10%削減するのは無理だと思います。それよりは、IT費用を多少増加させても良いので、つまりITを駆使してOperation Cost を1%ダウンさせる方法を考えてみませんか。IT費用を10%下げるよりは相当にインパクトがあるように思えますが、いかがでしょうか」と。

 正直、このロジックで理解されないことがなかったので、心の中では(ちょっと、はしたない言い方かもしれませんが)『よし、決まった。これで、この部門長さんも考え方を変えるに違いないぞ』と反応を待っていました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る