あなたの会社は海外展開ができるか:伴大作「フクロウのまなざし」(2/4 ページ)
IBMBCが、2年に1度行っている「Global CEO」スタディの結果を公表した。日本のCEO v.s. 世界のCEOという意味で興味深いものだった。
環境変化をなめているのか日本のCEO
グローバル、日本両方の調査で調査項目首位となった環境と社会問題だが、これをIBM BCCは「急激で複雑なパラダイム・シフト」と断じている。今回の発表で、これへの対応でも、グローバルと日本では大きな差異が生じている。
変化が急激であるとの認識に関し大差はない。むしろ、「従来よりも多くの要因が影響している」との変化の複雑性に関する認識について、日本企業は81%であるのに対し、グローバルは60%と高い。しかも、今回の経済環境の変化が「従来とは構造が異なる」との認識でも日本82%、グローバル53%とこちらも大きな影響を受けるという認識を持っている。だが、問題は「今後の変化に関する予測」だ。こちらに関しては、日本38%、グローバル65%と全く認識が異なっている。
なぜ日本のCEOはこのテーマについて楽観的な見通しを示せるのだろう。確かに、エネルギーに関して、日本の企業は欧米の企業と比べ積極的に取り組んできたという自負は分かるが、問題はそれだけだろうか。
これを僕は「根拠なき楽観主義」と呼ぶ。恐らく、日本のCEOの本音は欧米のように長期間CEO職にとどまることもないのだろうから、自分の任期の間には極端な事態に陥ることがないと判断したのだろう。それとも、本気でこれに真正面から取り組み、解決する自信があるのかもしれない。
グローバル企業は相対的にこの設問には慎重な回答を出しているようだ。会見の後に行われたQ&Aでも、このあたりに質問が集中した。IBM・BCCが例を上げて説明したのがお隣韓国の企業だ。恐らくSamsung、LG、Hyundai Motors、Pohang Steelsなどを暗示するような説明だった。
確かにSamsungは圧倒的な投資で日本企業を凌駕している。LGはそのSamsungに対抗するため、スピード経営を標榜している。Hyundaiの乗用車も着実に製品品質が向上し、世界のシェア中でも米国市場で高いシェアを獲得している。浦項製鉄も自動車同様、品質が上がり、価格で日本製品を圧倒している。
これら韓国勢の動きと比べると確かに日本企業の動きは遅い。松下電工、サンヨーを傘下に収めたパナソニックも完全に3社を統合するのは2012年だという。世界的に劇的な競合を繰り広げている太陽電池も、韓国台湾勢の投資規模と比較すると確かに見劣りする。
このように日本の経営者は意思決定のスピード、度胸という点で世界の経営者に明らかに劣っている。経済環境の変化は急だ。今の時代、それらに対応するため、経営者に対しリーダーシップというより、カリスマ性が求められている。その物差しで図ると一体全体、何人程度が合格ラインをクリアできるだろう。
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