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アジアの新興勢力バングラデシュは世界への扉女流コンサルタント、アジアを歩く(2/4 ページ)

わたしは「アジア新興国」と呼ばれる各国を単独でまわり、現地のリアルな状況を把握すべく、さまざまな産業の企業を訪問している。日本にいると、「アジア新興国」と一括りで考えてしまいがちだが、各国の各産業を生で見てみると、それぞれ状況は異なる。

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バングラデシュの衣料品産業

 バングラデシュ人民共和国は、インドの東側に位置し、インド洋に面する国家である。日本の面積の約1/3の国土に、世界第7位の1億4000万人強の人口を抱えており、都市国家を除くと世界で最も人口密度が高いことでも知られている。バングラデシュはイスラム教徒が多数派(83%)であるものの、ヒンドゥー教徒の人口割合もかなり高く(16%)、両者が平和裏に共存している点もこの国の特徴である。


現地のショールーム

 バングラデシュの経済は、衣料品産業によって支えられていると言っても過言ではない。衣料品産業は、1970年代後半から成長し続け、現在、バングラデシュの輸出総額の79.3%を占めている(2008/09年度)。ここ数年の傾向としては、ニット製品が既製服を抜いて最大の輸出アイテムに成長している。2007/08年度のバングラデシュの輸出額は、前年度比15.9%増の141億1080万ドルであったが、中でもニット製品は前年度から21.5%増加し、既製服を抜き、55億3200万ドルとなっている。バングラデシュのニット製品が世界の市場で認められていることは、私の目にした事象だけでなく、数字からも明らかなのである。そして、このニット製品の成長が牽引する形で、GDPも毎年5%後半から6%台の成長を遂げている。

 バングラデシュの衣料品産業は、既に世界の名立たるアパレル企業が注目している。日本でも有名な「ZARA」や「H&M」が生産拠点をバングラデシュに置いている他、多くの欧米企業がバングラデシュのサプライヤー企業と直接取引を行っている。また、中国での生産比率を下げ、バングラデシュでの生産比率を高めている欧州企業も多くなっており、バングラデシュの衣料品産業は、世界の主役を狙う地位を既に築いているのである。

出遅れた日本企業

 欧米のアパレル企業がバングラデシュの衣料品産業に注目し、ビジネスを展開する中で、日本企業は、完全に立ち遅れていると言わざるを得ない。対日輸出額は、2億200万ドルに過ぎず(2008/09年度)、バングラデシュの輸出総額の1.3%に過ぎない。2009年になって、布帛製品25.4%、ニット製品20.2%と衣料品品目の比率が高まってはいるものの、欧米諸国や欧米企業に見られるような戦略的展開は少なく、バングラデシュ進出日系企業も70社に留まっているのが実状である。

 もちろん、日本企業の事例がないわけではない。2007年に伊藤忠商事がニット工場を設立しているほか、アパレルブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングも2008年に現地事務所を開設して以来、バングラデシュでの生産を強化している。また、今年7月、ファーストリテイリングが、ソーシャルビジネス立ち上げのために、100%子会社「ユニクロ・ソーシャル・ビジネス・バングラデシュ」を9月に設立し、グラミン銀行グループのGrameen Healthcare Trustと合弁会社「グラミン・ユニクロ」を10月に設立することを発表したことは記憶に新しい。

 しかし、欧米の名立たる企業が既にバングラデシュに先鞭をつけている中、日本企業の出遅れが明らかなことは否定できない事実である。

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