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日本企業にとってグローバル化は大きなチャンス、「連携」や「らしさ」に活路

日本IBMの「GO GLOBAL FORUM」には500人を超える日本IBMの顧客やパートナーらが詰め掛けた。日本市場が縮小へ向かう中、企業のグローバル化は避けられない。基調講演で東京大学の伊藤教授は、「グローバル化はチャンス。リスクを取れるよう足腰を鍛えるべき」と話した。

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(上)東京大学の伊藤教授と北城恪太郎日本IBM最高顧問(下)ポール与那嶺日本IBM取締役専務執行役員

 「グローバル化は国内産業の空洞化を招く、と短絡的に見るべきではない。グローバル化は国際貿易を拡大する。日本企業にとって、ピンチでもあり、チャンスでもある」。東京大学で大学院経済学研究科長と経済学部長を務める伊藤元重教授は、日本IBMの「GO GLOBAL FORUM」の基調講演でそう話した。

 11月30日、朝から都内のホテルで行われた同フォーラムには、500人を超える日本IBMの顧客やパートナーらが詰め掛けた。少子高齢化で日本市場が縮小へ向かう中、世界経済の担い手は新興国へと代わりつつある。アジアを中心とする新興市場への進出など、グローバル化への一層の取り組みは避けられない。

 伊藤氏は、世界経済がかつてないスピードで変化する中にあっても、日本企業は「スマイルカーブ」で勝ち抜くことができると話す。スマイルカーブは、黄色の円に笑顔が描かれたキャラクター、スマイリーフェイスを思い浮かべると分かりやすい。その口元は下に向かって弧を描いている。左からビジネスの上流、中央は中流、右は下流であり、「上流と下流は儲かるが中流は厳しい」という日本企業の置かれた現状をよく表わしているという。

 「上流型のビジネスでは、デニム生地のカイハラのようなオンリーワン企業にグローバル化で大きなチャンスがある。また、下流はビジネスモデルを磨けば、ユニクロのように成長できる」と伊藤氏。

 厳しいとみられているのがビジネスの中流だ。日本市場は今後、想像を絶する市場の減少に直面するからだ。また、新興国の企業はビジネスの中流を得意とする。

 しかし、伊藤氏は「悲観することはない。市場が2割縮小しても8割の企業は残ると考えればいい。それほど難しくはない」と話す。

 基調講演後のパネルディスカッションでも、景気が冷え込む現在の延長線上でビジネスを考えるのではなく、あくまでもポジティブに企業の将来像としてグローバル戦略を描くべきだとした。

 モデレーターを務めた日本IBMのポール与那嶺取締役専務執行役員から「かつてはジャパン・アズ・ナンバーワンを日系人として誇りに感じたが、今やその競争力も低下してしまったのではないか」と問われても、「外交と同様、ビジネスも力任せでは上手くいかない。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)のような、連携がカギを握るはずだ。また、グローバル化といっても海外に出ていくばかりではない。現実的には、内なる国際化が重要だ。日本企業は、外国人を登用するなど、将来に向けた投資をしっかりと行っていけばいい」と悲観していない。

 「フランスは、料理やファッションなどで“らしさ”を売り物にしている。これまで日本はこの“らしさ”を出してこなかった。海外が求めているのは日本らしさだ」(伊藤氏)

 ただし、「リスクのないところにリターンはない」と釘も刺す。「グローバル化は長期で見ればチャンス。しかも、アジアという成長センターに近い、という良い立ち位置に日本はある。中国にもさまざまなリスクはあるが、それらを取ることができるよう足腰を鍛えておくべきだ」と話す。

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