戦略を学ぶ目的は「マネのできない理由」を見つけること(1/3 ページ)
戦略の神髄とストーリー
500ページにも及ぶ大部のビジネス書にもかかわらず、異例のベストセラーとなった「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」(東洋経済新報社刊)の著者、楠木 建氏は「自分が楽しめない、面白がれない話で人と組織を動かしビジネスをしようというのは、ほぼ犯罪行為だ」と話す。なぜなら、面白くない、つまらない、楽しめないストーリーによって作られたビジネスプランは、ほぼ成功したためしがないからだ。うまくいかないビジネスに無理やり付き合わされて、疲れるだけの毎日を送らされるなんて、確かに犯罪に近いのかもしれない。
「しかしね。楽しい、面白いなんて言いながらうまくいくビジネスなんてあるのかね」思わずそんなふうに反論したくなる向きもあるだろう。また「あのね。うまくいくから楽しいし、面白いんだよ。儲かるから楽しいのであって、最初から面白い話なんてあるわけない」なんて反応もあるだろう。
「戦略の神髄は、思わず人に話したくなるようなストーリーにある」と一橋大学大学院 国際企業戦略研究科教授の楠木氏は話す。ビジネス戦略論を語ろうとしているのである。おとぎ話のようなビジネス論をしたいのではなく、持続的に利益を生み出す企業が持つ戦略は、思わず身を乗り出し、「それで? その次はどうしたの?」と聞きたくなるストーリーを持っていると言いたいのである。
けもの道を走る経営者とそれを見つめる学者
ビジネスの現場では、頻繁に「戦略」という言葉を使う。国家の軍事も戦略だが、スーパーマーケットが来週から通常より30%引きの白菜を売るということも戦略という言葉で語られることがある。言葉の意味や使い方をはっきり線引きしましょう、というのではなく、楠木氏はどんな戦略もストーリーを持っているという立場でわれわれに語りかける。
楠木氏は経営の実務に携わる人々からの批判について、次のように話す。
「『学者が後付けで話す理屈なんて役に立たないよ。実際の経営はそんなものじゃない』。そう言われることはあります。実際、経営者の方たちは長年培ってきた野生の勘を頼りに、ビジネスというけもの道を走っているわけです。会社を経営したい、ビジネスで儲けたいなんてこれっぽっちも考えていない私には同じ視点には立てないのです」
では、現実の経営に役立つ戦略論なるものは、本当は存在しない?
楠木氏はこの問いに対して、こんな説明をする。
「けもの道を走っていない人間には、ひたすら走り続けている人には見えないものが見えるんですね。戦略というのは、無意味と嘘の間にあるものです。嘘というのは、『ぜったい成功する●●の法則』といった類の話です。法則というのは科学的に裏付けられたもの。ぜったいに成功する科学的に裏付けられた方法などはありません。しかし、法則はないけれど、論理は存在する。無意味ではないのです。実務でけもの道を走り続けている経営者の判断、社員の動き、これらを説明する論理は必ずどこかにあるのです」
つまり学者はこの論理を見極めるのが仕事だと楠木氏は言いたいのだ。そして論理は、「ここでこういう判断をして、それに対して、次のように動いたから、こうした結果に至った」という因果関係で構成される。因果論理で構成されるものをストーリーと呼ぶのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「CISOは1人の経営者たれ」――ログの先の人を思う、LayerX CISO 星氏
-
2
「人間洗濯機」が高齢者施設に 福祉の現場に万博技術導入 人手不足解消や産業成長に期待
-
3
高島屋・村田善郎社長 挑戦続けるアバンギャルドな百貨店 ベトナムや新型SCに重点投資 My Vision
-
4
なぜコーポレートITはコスト削減率が低いのか――既存産業を再定義することでDXを推進
-
5
ITmedia エグゼクティブ勉強会スケジュール
-
6
どの区立中からも通えるオンライン将棋部発足 休日はリアル、プロ級も指導 東京都大田区
-
7
森ビルが挑む、DXを通じた「ヒルズライフ」の充実とコア領域の内製化
-
8
第52回:「管理」する時代は終わった──AI時代、マネジャーに残された本当の仕事とは?
-
9
本田技研工業のDXはボトムアップとトップダウンで“Hondaらしく推進”
-
10
公共交通インフラの使命を軸に、事業継続への攻めと守りを大胆に実行する - JAL 鈴木氏
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー