業務を標準化することで未来は拓けるか?:Gartner Column(1/2 ページ)
「企業コストの削減」が目下のところ大命題で、業務コストを下げても品質が下がらないように、業務の標準化が必要だ、とおっしゃいます。確かに、業務品質の向上と標準化は、切っても切れない関係だと思います。
『ビジネス・プロセスを可視化して、各業務の標準化を進めて、業務品質を向上させるのです』
これは、ある企業のCIOがおっしゃっていた言葉です。この言葉に、間違いはありません。とても正しいです。でも、わたしには、ちょっと引っかかるのです。
このとある企業では、業務品質がどのくらい悪いのでしょうか。この企業は、コンシューマー向けのサービス業を展開しており、わたしの知る限り、世間の評判は悪くないようです。そして、同社のCIOの課題は、「企業コストの削減」が目下のところ大命題で、業務コストを下げても品質が下がらないように、業務の標準化が必要だ、とおっしゃいます。確かに、業務品質の向上と標準化は、切っても切れない関係だと思います。
ガートナー エグゼクティブ プログラムでは、従前から図1を示しながら、CIOの取り組みを皆さまにご説明しています。この図には、四角の中に「IN」と書いてあります。「In the Business」とご説明しています。その四角を覆うように円のところには、「ON」と書いてあります。「ON」は正確には、四角の外側であり、円の内側になります。この領域を、「On the Business」とご説明しています。
「In the Business」である四角の部分について、わたしどもは、現行の業務オペレーションとその改善に関するものであると定義しています。ビジネス部門とともに(in)、現在のお客さま、現在の製品・サービス、現在の組織、そして現在の競合他社の状況を含めた市場環境に対応するために、業務品質を高め、オペレーションコストを削減するという活動を指しています。具体的には、次のような仕事をしている時に「In the Business」であると表現します。
- 現在のITサービス、プロジェクト、IT運用を計画予算通りに実行する
- 現在のITプロセス、業務、能力を改善させる
- 現在のビジネスのコストを削減し、収益を上げるプロジェクトを実施する
一方で、「On the Business」である円形の部分(四角部分を除く)は、未だ見ぬお客さまや、将来、投入されるだろう新製品、新サービス、今後参入してくる海外からの競合勢などに対応するため、ビジネス部門を先導し(on)自社の変革に関わる活動のことを示していると定義しています。
- 企業変革活動(イニシアティブ)をマネジメントする
- 顧客獲得や市場開拓のために新しい製品、サービス、ケイパビリティを創造する
- 自社の方向性、戦略、及び自社がおかれている環境を変革することに貢献する
この図は、わたしどもでは、2006年ごろからよく使っているのですが、次の3点をポイントとしてお話するために利用しています。
1)企業の経営トップは、ビジネス・オペレーションのフロントエンドと中核機能に注目しており、ビジネス・プロセス、企業コスト、ワークフォースの有効性といった観点から現行のビジネス運営を改善するために注力することを望んでいる。一方、多くのCIOは、この期待値を裏切ることなく自身の戦略に組み込んでいる。
2)企業業績、商品・サービス、(組織/ビジネス)構造を進化させ、変革を起こす活動は、新たな企業のケイパビリティを確立することであり、このような活動がビジネス成長に貢献する。現在のビジネスに乗っかる形で、「On the Business」と呼ばれている。
3) 図2をご覧いただくと分かりやすいのですが、「In the Business」と「On the Business」では、マネジメントのベクトルの向きが正反対であるので、同一人物であるCIOが一人でマネジメントするのは困難である。しかし、この2つの方向性を同時に実行しなければ、CIOは信頼を失うだけではなく、ビジネスを理解しない、もしくは、自社のビジネス成長に不可欠な人物として認識してもらえない可能性が高い。
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