企業が変革していく鼓動を感じ続けたい――GABAの上山社長:石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(3/4 ページ)
社員が元気になると、会社も元気になる。現場密着型の社長が企業を変革させる。
GABAの財務諸表を見て、いけると思った
上山さんは、GABAの財務諸表を見た時に、当初から変革できると自信を持っていたと言います。2006年にマザーズに上場。上場当時は、売上75億で営業利益は14億、営業利益率は20%近いという優良企業でした。しかし2年後には、売上90億円で、6億の営業利益、営業利益率は7%となっていました。
上山さんが着目した点は、まず、売上高です。売上が伸びているという事実は、変革には重要な要素です。問題は、まず、経費に絞られます。上山さんの数字に対する鋭さが発揮されます。現場である英会話スクールが一等地にあることは問題ではありません。しかし、本社が一等地にある必要はないのです。GABAは、上場後、本社を中目黒駅前の一等地のビルに移転していました。まず、本社の再移転を実施します。
次に着目した経費は広告宣伝費でした。景気が悪くなるとどの会社もまず削るのが広告宣伝費です。しかし、上山さんは広告宣伝費の重要性も理解していて、やみくもに削減したわけではありません。むしろ、広告宣伝費は、基本的には一定のY切片を持つ一次関数であり、Y軸に売上、X軸に宣伝費をおくと、宣伝費をかければかけるほど売上は上がるものだと言いきっています。しかしながら、その傾きは一定期間リニアに上がった後、放物線のように傾きが鈍化していきます。
つまり、宣伝費をかけても売上高が同じように上がらない限界ゾーンがあるのです。GABAの当時の宣伝費は、売上高の約2割を広告宣伝費に費やしており、まさに、限界に達していると判断したのです。広告費は半減しました。もちろん、売り上げは落ちますが、その分販管責は絶対減り、営業利益は上がるはずなので、心配するなとげきを飛ばしました。
他方、上場後、売上や拠点数の伸び率の比べ人件費が膨らんでいたが、人がサービスの源泉である会社であるため、人心を考えリストラは一切しないと宣言。中途採用の凍結も同時に宣言しました。
追い風もありました。英会話需要の中身が変貌しています。上山さんの入社前は、景気もよく、生徒さんの3割が男性、7割が女性でした。英会話スクールというのは、趣味で英会話や、マンツーマンで外国人と話したいという女性中心の市場でした。
リーマンショックなどもあり景気が後退し、この市場は確かに縮小しますが、代わりに、ビジネス英会話のニーズが高まっていました。日本企業の最近の回復を支えているのは外需。会社が英語教育に熱心になっています。楽天やユニクロなど会社内で英語を公用化しようという動きもあります。30代、40代の人たちは英語が必須と思っています。コールセンターへの問い合わせに対し、成約率が高まっているのは、GABAの従業員の努力が大きいことはもちろんですが、必然性もあるからだと上山さんは思っています。法人契約の受講生の割合も増えてきています。
NOVAやジオスはグループレッスン制で、受講生を増やすために、教室を作りすぎ、銀行から借り入金がありました。銀行出身の上山さんに言わせると、英会話スクールのような前受け金ビジネスでは、銀行借入は厳禁なのだそうです。スクールビジネスのキャッシュフローを見ると、受講生は契約時にレッスン料金を支払う、それをスクールの運営資金とするわけですから、コスト計算さえしっかりしていれば、マイナスになるわけはないのです。GABAは、この方針を徹底しています。
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