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タイミング良く戦略を実行する方法海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(2/3 ページ)

景気循環を管理し、競争力を上げるには。タイミングを見極める目を経営者が持つ必要がある。

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人的資源

 アボン社、プログレッシブ・インシュランス社、アイシス・ファーマシューティカルズ社、そしてリーマン・ブラザーズ社はすべて、失業率が高い、不景気の時に人材雇用を行いました。このような景気循環に逆らったHRマネジメントは、重要な競争力をもたらします。不景気の時に採用を行う企業は他にはほとんどないため、能力のある人材を破格の賃金で雇う絶好のチャンスだからです。しかし、景気が少しよくなってきたときに、レイオフを行います。そのようなことをしては、従業員に彼らの雇用は安全ではないと伝えているようなものです。逆にコンピューター・チップ・メーカーであるザイリンクス社と、鉄鋼会社であるニューコア社は、不景気の間も人材資本を守っています。ザイリンクス社は、レイオフの代わりに戦略的な長期有給休暇、強制休暇そして賃金カットといった手段を講じます。そして、従業員に対しレイオフは行わないと約束しているニューコア社は、変動性の賃金、クロス・トレーニングそして忠誠心を持つ文化を育てています。

 このような従業員を確保しようとする方針によって、経験豊富な従業員は社内に留まり、その結果、景気が回復した時の採用人数や、トレーニング費用を減らすことができます。景気循環を巧みに管理する経営者は士気を維持することができます。しかし、管理の下手な経営者は、景気が良い時に従業員を雇用し、景気が悪くなると給料が下げます。そのため、上層部の人達は他の仕事が見つかると、すぐに逃げ出してしまうのです。

 なぜ、景気が悪い時にあえて人材を募集するのか?はた目から見れば非常識に思えるこの行動も裏を返せば、景気が悪いから安く良い人材を確保できるということでしょうし、そうした時に雇用を創出することで会社へのロイヤリティを高める事ができます。その他、「不景気の時」の人材雇用のあり方はさまざまですが、大切なことは、労働力が企業力を安定させるということを十分に理解することなのではないでしょうか。

供給プロセス

 シスコ社はマクロ経済動向を無視し、「幻の需要」を満たすために製品を製造し、最悪の事態を経験する事になりました。幻の需要は、本当に必要な量以上の製品を注文する事で、本当に必要な量を確保しようとする顧客の行動によって発生するものです。ビジネスが大盛況の時、シスコ社は注文に追い付くことができませんでした。1種類のアイテムを10個注文した顧客は8個しか実際に購入する事ができませんでした。そのため、確実に10個購入するために、顧客は15個注文するようになりました。幻の需要は、実際に必要な数を超えて過剰に製品を注文することを指します。シスコ社は、製造と在庫管理の計画を立てる際、この幻の需要を本当の需要として扱ってしまうという過ちを犯しました。また、外部のマクロ経済データを無視したため、計画に経済の実情を加味する事をしませんでした。

 卓越した供給チェーンとはどのようなものか知るには、在庫のマイクロマネージャーであるウォルグリーンズ・ドラッグストアを参考にしてみて下さい。また、トラック・メーカーであるパッカー社も景気循環を良く認識しており、不景気あるいは好景気に先んじるための生産調整を念入りに行っています。さらに、競合他社よりも3倍以上の在庫回転率を誇るデル社も参考になります。景気循環を通して自社の供給チェーンを管理し、上記のような結果を出すには次の手段を講じて下さい。

  • 不景気になる前に生産量を減らし、過剰在庫を避ける
  • 好景気になる前に生産量を増やし、需要を満たす十分な在庫を確保する
  • 経済指標および予測に注意を向ける
  • 在庫および供給チェーンを細部まで管理する。高い在庫回転率を保ち、長期間、大量の在庫を抱え込まないようにする。景気循環全体を通して在庫管理を行う
  • 現金を管理する。在庫回転率は景気が悪くなるにつれ上がり、良くなるにつれ下がらなければならない。不景気になる前に在庫を減らし、注文が再び増える前に在庫を増やすこと
  • 注文数に合わせて製造することで、在庫の管理を失敗するリスクを減らす。

 本当の需要量とはどれくらいなのか?これを確実に把握することで、在庫を極力減らすことが可能になるわけです。在庫を抱えるのではなくキャッシュを抱えることが、会社にとってのより良い資産となるわけです。もちろん、受注の増える前に製造を増やす事も大切なのですが、そのための予測、つまり、「タイミング」がどれだけ重要なことかということがここで語られています。

景気循環に合わせ、マーケティングを管理する

 Kマート社は、不景気の時に広告を削減し、自分の首を絞めることになりました。その一方で、デル社は不景気の時に広告を増やし、市場の中で大きく主張をする唯一の存在になったことで、利益を上げました。また、ピザハット社は不景気を利用し、大安売りを宣伝しました。しかし、広告が景気循環を基準として、マーケティングを管理する唯一の手段ではありません。

 顧客セグメントや市場に再び焦点を当てる事で、不景気を乗り越えるきっかけをつかむことができます。例えば、シンガポール航空は、不景気の間でも飛行機を利用し続ける可能性の高い顧客、つまり、ファーストクラスを利用したり、正規料金を支払ったりする顧客をターゲットとすることで、株の下落を抑制しました。また、ネイチャー・コンサーバンシー社は、2000年の株式市場の暴落の被害にあっていない寄付者を集めるための勧誘に再び焦点を当て、寄付を増やすことができました。次に記す景気循環に基づくマーケティングのヒントを参考にして下さい。

1、景気循環に逆らってマーケティングを行う

  • 顧客をベースとした傾向に合うよう、製造量やマーケティングのテーマを調節する

2、不景気の時により多くの宣伝を行う

  • コストも低く、競争相手も少ない

3、時期と広告および提供品を調整する

  • 不景気の時には安い値段で多くの製品を提供する

4、異なる顧客のグループをターゲットにする

  • あるいは、異なる市場セグメントに参入する

 不景気だからあらゆる事を削減することほど愚かしいことはありません。売るために必要な仕掛けのコストは、不景気だからこそ費やすべきでしょう。ただし、こういう時こそマーケティングは必要であり、顧客を絞り込む戦略を立てねばなりません。そのための具体的策がここで書かれている4項目になります。

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