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シンプルに結果を出すためのエグゼクティブ・コーチング海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(2/3 ページ)

エグゼクティブ・コーチングとは何か、コストはどの程度なのか。多くの組織はコーチングをどのように活用しているのか。

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大きな需要

 エグゼクティブ・コーチングの人気はますます高まっています。企業は、指導教育活動を含め、社内外のエグゼクティブ・トレーニング・プログラムを補うため、あるいはその代わりとして、エグゼクティブ・コーチングを利用しています。

 今日、コーチングは、上級管理職者の教育および学習の手法のトップ5の中にランクインしています。40000人のプロのコーチが世界中で活躍しており、毎年10億ドルの利益を上げています。

 また、コーチとしての職は年間40%の割合で広まっています。多くの組織が、エグゼクティブ・コーチングはリーダーを育成し、素早く必要な情報を与えるための理想的な手段だと考えています。コーチング・プログラムは、数多くのセッションに分かれています。そして、決して安価ではありません。多くの場合、コーチとクライアントは最長で1年ごとに定期的に会い、コーチの時間給は300ドルから500ドルです。費用は通常、年間で約30000ドル、または、6カ月間のプログラムで20000ドルです。「超一流」コーチの場合だと、12カ月のプログラムで250000ドル掛かることもあります。現在、コーチの中には、「成果保証コーチング」を提供している人もいます。コーチとクライアントが達成目標に同意し、リーダーがその目標を達成した時のみ、コーチは謝礼を受け取るというものです。

 コーチの中には、以前、企業リーダー、トレーナー、コンサルタント、心理学者など専門職に就いていた人がいます。有名な企業、例えば、ユニリーバ、ジョンソン&ジョンソン、デル、ゼネラル・エレクトリック、エイボン、ゴールドマン・サックス、ウォルマートなどは、定期的にエグゼクティブ・コーチングを利用し、上級管理職の教育を行っています。これだけの企業で導入されている理由は、企業がエグゼクティブ・コーチングはそのコストペイが容易であると考えているからです。インテル社の報告によると、エグゼクティブ・コーチング・プログラムへの投資収益率(ROI)は、驚くことに600%です。

 エグゼクティブ・コーチングとは、単体で行われるよりも社内外の管理職用のトレーニングの一環として行われており、エグゼクティブに特化したコーチングにすることで、その付加価値を高める事ができるのです。インテル社の投資収益率(ROI)から考えても、企業の成果はその舵取りをする人材の能力による部分が大きいということを感じさせる事例です。

エグゼクティブ・コーチングの拒絶

 エグゼクティブ・コーチングは比較的新しいものであるため、組織の中には取り入れる準備が整っていない場合があります。もし、その企業文化がコーチングを受け入れられないのならば、始めるために「裏側」からのアプローチを取る必要があります。その方法の1つは、エグゼクティブ・コーチングに反対していない上級管理職や部署に対してまずコーチングを提供する事です。最初にそういった上級経営者からの初期教育活動への支持を確保し、その後、コーチング・プログラムへの支持も獲得しましょう。CEOの40%がエグゼクティブ・コーチングによって恩恵を受けたり、あるいはCEO自身に対しコーチングを行ったりしていることを指摘することも効果的です。

 上級管理職の中には、コーチングに付きまとう悪いイメージが理由で、嫌っている人がいます。彼らは、組織内の人間に自分は欠点のあるリーダーだと思われてしまうことを懸念しています。このため、人事部(HR)あるいはリーダーシップ開発の管理者は、コーチングを問題のあるリーダーのための再教育コースとして紹介してはいけないのです。そうではなく、特別なプログラムとして紹介し、少なくとも最初は、最も有望な上級管理職だけのものであるとうたう必要があります。そうすることで、組織のリーダーは参加したいと強く思うようになります。人事部やリーダーシップ開発などの部署の中で参加者を探すことにためらってはいけません。また、エグゼクティブ・コーチングの価値を裏付ける証拠を活用して下さい。

 コーチングを、組織のリーダーシップ開発や優秀な上級管理職者の努力と結び付けて下さい。コーチングを、HRが提供する教育活動のトータルパッケージの一部として織り込んで下さい。しかし、その場しのぎのためにコーチングを行ってはいけません。なぜなら、それでは効果的なリーダーシップ開発プログラムを維持することは出来ないからです。全てのコーチング活動に対し、目標を設定して下さい。コーチングによって組織の全体的なビジネス戦略が確実に支持されるようにすることが大切です。

 上級管理職がビジネス戦略を遂行するために持っていなければならないスキルを特定し、しかるべくコーチング目標を立て、活動を計画して下さい。例えば、HRやリーダーシップ開発担当者がプログラムの重要な出来事を追跡するためのチェックリストを作って下さい。含むべき項目は、コーチングする理由、具体的な目標、測定方法、結果です。コーチングの開始、実際のセッションを行っている間、そしてコーチングの終わりまでモニターして下さい。

 コーチングを受ける事がどれだけ素晴らしいことであっても、それを拒絶する人がいるということも忘れてはなりません。確かに、コーチングやコンサルティングという比較的新しい無形のサービスはその成果が出てこそ初めて真価が問われるのですが、ここにも記載されているように、リーダーとして絶対的自信を持った人に、いきなりコーチングを進めても逆効果であることはよく分かります。コーチングを受けるにあたり納得いく理由を述べる事で、コーチングに対する拒否反応は解消されるのではないでしょうか。

準備をする

 組織は、エグゼクティブ・コーチングを慎重に計画し、準備を行わなければなりません。適切なコーチをリーダーにあてがうことは、非常に重要なことです。コーチとリーダーの相性が悪いと、ほとんどの場合コーチングは失敗してしまいます。コーチング参加者の意見を求めるか、彼らに2、3人のコーチの中から選ばせましょう。上級管理職は、自分が選んだコーチについて文句を言うことはあまりありません。また、参加するリーダーの上司にもプランニングに参加してもらって下さい。その際、上司はコーチングに参加するリーダーがコーチングによって確実に成長できるよう、彼らの業務上の責務を調節することに前向きでなければなりません。

 エグゼクティブ・コーチングの目標と組織の目標が合致しているか確かめて下さい。組織のニーズに合致したパフォーマンス評価基準を作って下さい。組織の中には個別の「成果基準」を作る所もあります。それができない企業では、全てのコーチング・プログラムに適応できる基準を設定しています。また、コーチングプランは、大きな見返りが期待できる数少ない特定の分野に焦点を当てている事を確認して下さい。多くの場合、そういったプランには、新しく学んだ行動をリーダーに取らせるための、行動リハーサル/練習活動が含まれます。さらに、コーチングには「シャドーイング」あるいは「観察コーチング」というものが含まれることもあります。それらは、コーチが上級管理職の通の業務の動きを観察するものです。各プログラムをどのくらいの期間続けるべきか、組織はどのようにプログラムを監視するか、そして、プログラムに関わっているその他の関係者とどのように上級管理職は連携を取るか、明確にして下さい。

 コーチは企業リーダーの育成に様々なツールを活用します。最も使われているツールは「360度評価10」です。360度評価とは、上司、同僚、直属の部下が上級管理職のパフォーマンスに対してコメントを行うものです。また、上級管理職の多くはマイヤーズ・ブリッグステスト11を受け、自分の性格タイプをよりきちんと理解しようとします。その他のよく使われる評価ツールには、リーダーシップの強みと弱みを評価する「プロフェッショナル・ダイナメトリック・プログラム」や、心の知能指数13を測定する「タレント・スマート」などがあります。ただし、こういったツールに何にでも使えるアプローチを当てはめてはいけません。

 トレーニングに関して言えば、一貫性が非常に重要です。そしてそれと同時に柔軟性も欠かすことができません。多くの組織が一貫性を好みます。コーチング・プログラムがROI目標を達成できているか評価する理想的な判断基準を設定する事は簡単なことではありません。あるいは不可能なことかもしれません。よって、企業はコーチング・プログラムを管理する方を好むのです。しかし、それでもコーチは各リーダーのニーズに応える柔軟性を持っていなければなりません。

 この矛盾を解決する方法は、「何を管理するか選び、残りはゆだねる」ことです。コーチに企業のリーダーシップ育成枠組みの範囲内で仕事をしてもらえるよう要求し、それと同時に必要に応じた新しいツールや技術をコーチが導入することを許可することが重要です。

 もし一貫性が特に懸念事項となっている場合、コーチングを受けている上級管理職者をチェックし、コーチングのセッションの中での彼らの様子を確認しましょう。それと同時に、コーチに綿密なプランを提供するよう求めて下さい。また、エグゼクティブ・コーチング・コーディネーターを雇い、コーチと連携を取らせ、常に組織の目標と活動をコーチに知らせ続けてもらうこともできます。しかし、多くの企業がこのような基本的な措置を取り損ねてしまいます。

 当然のことですが、どんなに優秀なコーチであっても相性の悪いエグゼクティブを担当させると、マイナスの効果しか得る事ができません。逆に参加者からコーチを選ばせることも必要です。また、コーチはそのプログラムにおける目標と目的を明確にしていく必要もあります。コーチングを成功に導くにはいかに準備が必要であるかここから理解できます。

社内発のコーチングを行う

 多くの組織が今、自分達独自の社内コーチング機能を開発しています。社内コーチング機能を持つことで、コストを削減し管理を厚くすることができます。コーチを職員として雇用すると、企業文化を支持するコーチングを確実に行うことができます。また、社内コーチング・プログラムを持つことによって、全ての実地訓練の質を向上させることも可能になります。こういった理由のため、多くの組織が今、社内の「コーチ育成プログラム」を立ち上げています。しかし、誰もがエグゼクティブ・コーチになる資格を持っているわけではありません。社内コーチが外部コーチと同じだけの信頼を集めることは多くの場合ありませんし、最善のコーチング手法の最新情報も得られません。よって、自社専用のコーチング・プログラムを作るかどうか判断する際は、コーチの費用、経験、信頼性など、良い点と悪い点を考慮することが大切です。

 社内コーチングという概念はある意味理想といえるのではないでしょうか。企業の目標や目的を確実に理解しているのはその社内の人間ならではのことですし、アウトソーシングするコーチに比べて人件費も安く済みます。そして何よりも自社の風土にあったコーチングへのアレンジも可能になって来ると思います。

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