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「イノベーティブ経営の実践に向け、人のつながりを把握せよ」――東京工業大学、飯島教授ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)

組織内における人と人とのつながりは、組織の業績を大きく左右する。各種調査によってもこのことは実証されてきた。では、組織における人と人のつながりを陽表的に把握するためには、どのような手法が効果的なのか。その観点からここにきて注目を集めているのが、「DEMO」(Design and Engineering Methodology for Organization)である。

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情報の全社活用に不可欠なプロセス志向性

 少し前のガートナー・ジャパンの調査によると、日本企業のIT投資マインドは主要先進国の中で最も低く、また、GDPに占めるIT投資の割合も、米国の3.5%に対して日本は2.0%にとどまるのが実情だ。


東京工業大学の飯島教授

 加えて、日米のIT投資と生産性向上との相関係数を確認すると、製造業と非製造業の双方で米国の水準を大きく下回り、特に後者は米国の10分の1にも満たないほど。このことから、日本では総じてIT投資に後ろ向きであり、しかもその少ないIT投資さえ有効に行われていないことが理解されよう。

 その理由としてかねてから指摘されてきたのが、日本ではシステム活用の遅れから、その利用が部門内にとどまり、情報を全社規模で有効活用できていない点だ。このことを踏まえ、東京工業大学・大学院社会理工学研究科教授の飯島淳一氏は、3月3日に開催された「第20回 ITmediaエグゼクティブセミナー」の基調講演で、日本企業がITを有効活用できない理由について、次のような説を披露した。

 「インターネットの普及に伴い、先進的な企業は部門や組織、国の壁を越えて情報を共有し、ビジネスの効率性を増してきた。その点を考慮すれば、ITをうまく活用できない企業は、情報共有のためのネットワークと、その上で情報をやりとりするために必要とされるビジネスプロセスへの志向性が弱いためだと考えられる」

DEMOで人と人とのつながりを解き明かす

 マコーマックらは2001年に発表した論文で、大規模調査にもとづき、ビジネスプロセス志向性が高い組織は部門間連結が進み、機能間コンフリクトがないことから、組織内に一体感が醸成され、業績が向上すると指摘した。また、ビジネスプロセス志向性とイノベーション経営との関係を解き明かすため、2010年にわが国の上場企業を対象にして実施した大規模調査の結果からは、次のことが明らかになったという。

 「ビジネスプロセス志向性の高い企業では、従業員のイノベーション行動が、企業としての成果へとつながっている。それに対して、ビジネスプロセス志向性が低い企業では、イノベーションに対する従業員の態度が行動に結びつかず、成果にもつながっていない。ビジネスプロセス志向性とイノベーション経営が極めて密な関係にあることは、このことからも理解できるだろう」

 ビジネスプロセス志向性を論じるにあたっては、情報共有のためのネットワーク、すなわち人と人とのつながりを無視することはできない。飯島氏が、その解明のために有効な手法として提示したのが、「DEMO」(Design and Engineering Methodology for Organization)である。

 DEMOはデルフト工科大学のヤン・ディーツ名誉教授によって開発されたビジネスプロセスのモデリング手法であり、その特徴は観察可能な表層の下に隠れた深層構造である「オントロジー」をモデル化の対象としていること。つまり、企業活動におけるデータ転記のような単純処理や計算/加工といった意味付与を伴う処理ではなく、意思決定を伴う活動に重きを置くことで、コミットメントの可視化を図っているわけだ。

 「DEMOでは企業活動の大半は生産ではなく調整であるとされ、行為の意図に焦点を絞り、トランザクションと意図とを対にして1つの活動と捉える。このアプローチを採ることで、企業活動を“原子レベル”のプロセスモデルと“分子レベル”の構成モデルで把握することが可能になるのだ」(飯島氏)

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