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変革のエンジンとなるプロジェクトチームの作り方――シグマクシス、倉重会長ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)

第18回 ITmedia エグゼクティブセミナーでは「社員こそ競争優位の源泉 ワークスタイル変革で新たな価値創造を」というタイトルのもと、さまざまなスピーカーが熱弁をふるった。基調講演ではシグマクシス会長の倉重英樹氏が、企業に競争力とイノベーションをもたらすワークスタイル変革について持論を展開し注目を集めた。

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すでに始まっているマーケティング3.0

 倉重英樹氏は元日本アイ・ビー・エム代表取締役副社長。その後プライスウォーターハウスコンサルタント代表取締役会長に就任し、2002年、IBMとのグローバル統合によりIBMビジネスコンサルティングに社名変更すると同時に、同社のアジアパシフィック地域責任者に就任し、IBMのコンサルティングビジネスの立ち上げをリードした経歴を持つ。その後も日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)にてソリューション・ビジネスへのビジネスモデル変革を成功させるなど、様々な業界での経営経験を有する。シグマクシスは倉重会長が2008年に創業したコンサルティング会社で、リーマンショック以降も四半期ごとに25%の売上増を達成しているという。


シグマクシスの倉重会長

 倉重会長によると、シグマクシスはクライアント企業にとって医者のような存在というより、登山の時に活躍するシェルパに近いと話す。

 「患者に対してあれこれ指示をする医者というよりも、クライアントに寄り添いながら目標に向かって一歩ずつ進んでいくシェルパのような仕事をしているといった方が、分かりやすい」(倉重氏)

 そんな従来のコンサルティング会社とは一線を画した企業の経営トップとして、倉重氏はワークスタイルの変革についてさまざまな試行錯誤を重ねてきた。まず、倉重氏は現在の状況認識を次のように語る。

 「今、大きな時代の変革期にあることは多くの皆さんが承知していることだと思います。私も、この時代を大変ではあるけれど、チャレンジングな時代だと考えています。変革の中で影響力の高いものが2つあります。それは、消費者と働く人をとりまく環境の変化です」

 倉重氏は、まず消費者の変化について説明する。

 「フィリップ・コトラーは『マーケティング3.0』の中で、いい製品を作れば売れていたマーケティング1.0の時代、そして消費者が生活者としてさまざまな主張をはじめたのに合わせて、彼らを細かいセグメントに分けてマーケティング活動を行うマーケティング2.0の時代をへて、マーケティング3.0の時代がやってきたと主張しました。それは、消費に社会的価値や、精神的な充足が求められるようになったということです。消費がグローバル社会で起きている貧困などのさまざま問題に対するソリューションでもあるべきだと考えられるようになったのです」

 マーケティング3.0の時代に日本がいままさに突入しているかどうかは別として、倉重氏の主張がユニークなのは、「技術に勝ってビジネスに負けた」と称される製造業をはじめとする日本企業が抱える問題とマーケティングに関するコンセプトの変遷を関連させて論じるところだろう。「消費者はどんどん変化している。その変化を正確につかまなければビジネスに勝つことはできない」ということなのだ。

これからの時代のモチベーション

 企業で働く人財側をとりまく環境はどうだろう。この点について倉重氏は ダニエル・ピンクの「モチベーション3.0」を引き合いに出して話す。すなわち、生活のために働くモチベーション1.0、与えられた動機、目標に向かって働くモチベーション2.0といった段階から、自発的な動機から働くというモチベーション3.0の時代に入ったという事実である。

 「やりたいことと、できること、そしてやるべきことができるだけ重なっている仕事をするのがいい。シグマクシスでも、社員に対してさまざまな動機付けを行っています。やるべきこと、やりたいことを優先して考えさせ、企画書作り、会社に承認されればプロジェクトとして動かしていける。しかし若い人はまだ、できることの範囲が小さい。だからこそさまざまな人とコラボレーションしてプロジェクトを進めることを考えさせる」(倉重氏)

 このように消費者側、企業で働く人財側の両面からみても、変革の時代は非常に身近なところで動いているのである。そして企業が環境に合わせて変化し、競争に打ち勝つには、この両者を取り巻く変化を正確にとらえる必要があると倉重氏はいう。

 「80年代に入って、日本のモノづくりは少しずつ衰退し始めました。どんなに付加価値をつけても売れなくなってきたからです。そこで企業は、それまでの付加価値戦略に対して、『課題解決価値』という概念を生み出し、ソリューション・ビジネスを志向し始めました。しかし結局はソリューションという名のプロダクトを作っているだけで、新しいビジネスモデルを作り上げたわけではなかった。従来型のモノ売りの世界からは脱却できていなかった、というのが実態なのです。」

 ソリューションという名のプロダクトを生産し続けている間にも、マーケットはどんどん変化していき、消費者の期待に応える製品やサービスを生みだすことも、そこに人財の能力を活用することもできないままでいた。「技術に勝って、ビジネスに負けた」そんなフレーズはこういう背景から生まれた。

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