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アジア新興国・消費市場へのアプローチとその効果――ヤマモリ株式会社のタイ進出事例――女流コンサルタント、アジアを歩く(1/3 ページ)

本稿では、日本の食品メーカー「ヤマモリ株式会社」のタイでの事業展開についてご紹介する。そこには、日本企業がアジアの成長・発展とともに“新興”する上での大きなヒントがある。

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サンプル試食風景

 タイの日本食屋さん(和食レストラン)でよく目にする醤油を製造・販売しているヤマモリトレーディング株式会社。 ヤマモリトレーディング株式会社は、ヤマモリ株式会社のタイ現地法人である。

 今回、わたしは、バンコク都内にあるヤマモリトレーディング株式会社のオフィスを訪問させていただいた。まずは、商品開発室へ案内され、 早速、いくつかのサンプルを試食させてもらった。ここ商品開発室では、商品の試作・開発ばかりでなく、商品の使い方・調理の提案方法の研究に余念がない。

 「これは、バンコクから西へ何キロか行ったところにある港で作られた小魚の干物と、当社の3倍濃縮つゆを合わせて作ってみた日本風の“ふりかけ”です。」「これは、ある村で生産された大根の砂糖漬けを当社のポン酢しょうゆに漬け込んで作ってみた“漬物”です。」

 その他いろいろなサンプルを試食させていただいたが、どれも白いご飯を欲してしまうほどのおいしいサンプルばかりで驚いた。

 その驚きの表情を見て、ヤマモリトレーディング株式会社の社長、青木理浩氏は、「我々日本人の口に合うものばかりでしょう。」とおっしゃった後、こう続けた。「でも、これらのサンプルは日本人の口に合っているだけじゃない。この大根の砂糖漬けを製造している会社のタイ人の皆もおいしい、おいしいって言うんだ。現地タイの人たちの口にも合っているってことなんだよ。」

 わたしは、ここに、アジア新興国の消費市場への進出と発展のヒント、あるいはアジアの成長・発展とともに日本企業も“新興”するというモデルのヒントがあるように強く感じた。

ヤマモリ株式会社について


ヤマモリ社のグリーンカレー

 ヤマモリ株式会社は、三重県桑名市に本社を置くレトルトパウチ食品、醤油・調味料メーカーである。ここタイで和食レストランを営む店や企業の多くは、ヤマモリ株式会社のタイ現地法人であるヤマモリトレーディング社と取り引きをしており、実際、わたしも多くの店で目にしている。

 ヤマモリ社は、1995年に、タイ現地会社との合弁で、販売会社「ヤマモリトレーディング株式会社」を、タイに設立した。その後、同合弁パートナーの協力を得て、タイにおける最適な醤油醸造条件のテストと、工場建設および醤油の醸造・製造期間を経て、タイに進出している日系の食品加工業者向けに、1997年から醤油の販売を開始した。

 日本で醤油メーカーとして120余年の歴史を持つヤマモリ株式会社は、日本有数のレトルトパウチ食品工場を持つ会社でもある。ヤマモリ社は、2000年から、タイにある関連会社で、タイメニューのレトルトパウチ食品を委託製造し、日本への輸入も開始した。

 「日本へタイの食文化を紹介する、そしてタイへ日本の食文化を紹介する」というスローガンの下、両国間の食文化の媒介役として、日本とタイのそれぞれの市場に対して、付加価値の高い商品を提供することをモットーとして事業が進められている。

 2004年末には、タイにレトルトパウチ食品を製造するための自社工場(Siam Yamamori Co.,Ltd.)も完成し、更に本格的にタイメニューのレトルトパウチ食品の開発と製造を推進した。

 その結果、ヤマモリ社のグリーンカレー(レトルト食品/定価350円)は、2008年から3年連続でモンドセレクション金賞を受賞しており、日本とタイの食文化交流の担い手として、大きな勲章を手にすることとなった。

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