「ワーク=ライフ」の時代:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)
近年、働く現場にワークライフバランスという考え方が大きな影響を与えている。しかしこれはワークとライフを分けて考えるのではなく「ワーク=ライフ」として取り組んでほしい。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ワークライフバランスに便乗する人達
近年、働く現場において大きな影響を与えたのはワークライフバランスという考え方でしょう。昨今のワークライフバランス論の高まりはまさに時代の趨勢であり、わたし自身も大切なテーマだと考えています。出産・育児や介護を抱えて十分に働くのが難しい女性に象徴されるような、弱い立場にある労働者が望まない選択を迫られることのないよう配慮したり、安心して働き続けられるような制度や環境を整えることは、企業や社会として重要なことは言うまでもありません。
しかしその一方で、ワークライフバランスが広まることの、いわば副作用とでも言うべき現象のことを考えると、必ずしももろ手を上げて賛成できないというのが正直なわたしのスタンスでもあります。なぜなら、そもそもワークライフバランスの考え方はダイバーシティの(多様性)の実現の1つとして登場し、その本質は多様な価値観を認め個人が、働き方をそれぞれに選択できるというところにあります。即ち、仕事100%で働きたくない人にはそうしなくても良い権利、そして何らかの理由で十分に働けない人には相応の配慮が認められる一方で、もっと働きたい人に対してはどんどん働くことが認められるというのが本来の姿だったはずだからです。
しかし今日、ワークライフバランスが拡大解釈され過剰に喧伝されたことによって、「ハードワークや長時間働くことは良くないこと」という考え方が社会に浸透してしまい、仕事こそ自分の生きがいと感じてハードに働きたい人の、頑張る権利と自由が奪われてしまっている現実が生じています。更に、本来は恵まれた立場の人までもがこの流れに便乗して、一生懸命に働くことを否定するような風潮すら見受けられます。こうした影響は、日本の若者の学力低下と頑張る姿勢を弱めてしまった原因と言われている「ゆとり教育」と同じ構図になっているような気がしています。
企業の現実を考えると、一生懸命働かない人が主流化してしまうということは、働く意欲も価値を生み出す能力のスタンダードも、低下し、最終的にはその組織が崩壊してしまうことにもつながります。グローバルビジネスにおける企業間競争は激化する一方であることを考えれば、ワークライフバランスの過剰な蔓延は、今、企業にとって大きな経営リスクにもなってしまっているのです。
ワーク=ライフの働き方
ところで、わたし自身が、ワークライフバランス論に便乗して一生懸命働かない人達の話を聞いている中で、気づいたことがあります。それは、彼らはワークとライフは完全に分けて考えているということです。彼らにとってワークはむしろ苦役であって、いかに嫌なワークを軽減させライフを充実できるかいった意識で仕事と日常生活を捉えていました。
また一方で印象的だったのは、そうした彼らの多くが日々の充実感を得られていないことでした。実は彼ら自身、怠けている自分やライフだけでは満ち足りていない自分を自分自身が知っていて、本音のところでは「仕事もできることなら頑張りたいし、仕事でも充実感を感じられるようになりたい」と思っていました。
こうした事実を踏まえて、わたしが本書で語りたかった最大のメッセージは、ワークとライフは分けて考えるのではなく、「ワーク=ライフ」の意識で真剣に仕事に取り組んでこそ得られる充実感や喜びがあるということです。そして、良い仕事をするための最大の秘訣は、本人がどれだけ「ワーク=ライフ」の心構えで、仕事自体を目的化して一生懸命打ち込めるかにあるということでした。
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