思考の枠を広げろ:未曾有の危機に直面したリーダーに求められること(2/3 ページ)
「思考の枠」とは何だろうか。それは、思い込みや固定観念、レッテルのことである。緊急時は、これまでの前例にとらわれず、今何ができるかを考えなければならない。
「思考の枠」を広げるには
「思考の枠」を広げるということは、これまでのやり方が通用しない、これまでの前例にとらわれず、今何ができるかを考えることである。それでは、この思考の枠を広げるにはどうしたらいいのだろうか。
それは現実を見せてあげることが一番である。今回の震災のような未曽有の危機は、この「思考の枠」を広げる絶好のチャンスである。「思考の枠」は思い込みや固定観念であるが、このような未曽有の危機の際には、これまでの経験などがまったく通用しない。「過去にこういう風にやったから」「今まではこうだったから」このような考え方が役に立たない。まずはそれを取り去り、あらゆる手段を講じることを考えなければいけない。
未曽有の危機の際にリーダーに求められることは何かということからスタートする。それは、「目標達成」である。もちろん平時にも目標達成は求められるが、危機の際には、人命に関わったり、企業の存続につながることも多く、目標達成は絶対の条件。目標達成をできないと、会社の経営を揺るがす事態に陥る可能性もある。目標を達成するために何ができるかを考え、必ずそれを達成する実行力が求められる。
目標達成という視点を持っていたら、今本当に何をすべきかが見えてくる。未曾有の危機の際には、過去の成功体験をいち早く忘れ、あらゆる可能性の中から、今何ができるか、知恵を絞る。
少し前のことになるが、2010年8月にチリのサンホセ鉱山の落盤事故が起きた。救出作業は世界で大きなニュースになり、記憶している人も多いのではないだろうか。事故発生当初は救出までに4カ月以上かかると言われたが、大統領とはじめとしたチリ当局は世界各国に救援を求め、予想よりも2カ月以上早い10月に全員が救助されることになった。
アメリカのNASAが専門家チームを派遣し、狭い場所での生活についてアドバイス。中国が重機を提供。日本は独立行政法人宇宙航空研究開発機構JAXAが宇宙飛行士の国際宇宙ステーションでの生活用に開発した下着(上下セット)をチリ大使館を通して提供したという。
世界の英知を結集して、この問題を解決したのである。未曾有の危機が発生した場合、すべてを自分たちで解決しようとしないでもよいかもしれない。このように世界の英知に訴えることも学ぶできことである。
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