中国が世界を支配する時:海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(1/2 ページ)
世界は、西洋の支配が弱まっている中、「現代的競争」の時代――産業における西洋モードと東洋モードが競い合う時代――に突入している。中国の強さの秘密とは。
この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。
3分で分かる「中国が世界を支配する時」の要点
- 世界は、西洋の支配が弱まっている中、「現代的競争」の時代――産業における西洋モードと東洋モードが競い合う時代――に突入している
- 中国の急速な近代化により、独特の問題とその解決法が生まれており、中国と西欧諸国を区別する8つの主な特徴が浮き彫りにされている
- 1つ目:中国は「文明国」であり、初代王朝の時代からそうである
- 2つ目:中国は東アジア諸国を属国だと見なしている
- 3つ目:中国人は自分達を1つの人種のグループだと考えており、本質的に独立した、優れた存在だと考えている
- 4つ目:中国は巨大人口を抱えながら大規模な運営を行っており、過剰な低賃金労働と巨大な消費需要を生み出している
- 5つ目:中国政府は、完全な、ほとんど親のような権力を理想とする儒教を信仰している
- 6つ目:中国は過去と未来を組み合わせ、劇的な変化の中、発展している
- 7つ目:中国の共産主義の指導者は、適応能力があり実用主義で、考えが凝り固まっている
- 8つ目:先進国および新興国として、中国は大きな差異――旧いものと新しいもの、都会と農村地区――と闘っている。近代化する中、この社会的ギャップに対応しなければならない
この要約書から学べること
- 中国の歴史はどのように未来を形づくるのか?
- 中国の国内および国外政策とは?
- 中国と西欧諸国を区別する8つの要素
本書の推薦コメント
近年の中国の経済発展は目覚ましいものがあり、世界のパワーバランスは、まさに大きな変化を起こそうとしています。中国に関するトピックは、まさに世界の感心事であり、アメリカ国内でも、中国関連の類書は非常に多いようです。
本書は中国について知るというだけではなく、国家という大きな枠組みにおいて、その強さの循環を知る事ができる良書です。著者のマーティン・ジェイクスは、本書において、中国の歴史、文化、ビジネスメソッド、そして未来の可能性、中国がこれから経験する変化などについて解説しています。中国をはじめ、東アジアなどの新興国でビジネスを考えているすべての人に、本書をお勧めします。
「中国四千年の歴史」とちまたで言われるほど、中国という国は世界中で最も歴史の古い国です。しかし、その歴史を垣間見ると、全く異なる国家が出現しては、滅亡を繰り返してきました。近代まで、中国には「王朝」の概念はありましたが「国家」いう考えが存在しませんでした。つまり、「天下あって国家無し」という状態の歴史で形成されていたために、歴史のその時代の支配をしていた王朝の名前が対外的な名称として用いられてきました。
しかし、中国人の根底にある「中華思想」が、国家の形成失くしても民族すべてを取りまとめる事ができたのではないでしょうか? 実際、現代においても中国外交を見ている限り、他国にとって理不尽と思えるような事でも、それを正当化してしまう強い力を持っています。本書では、そんな中国の今後歩むであろう、道への未来予測と、今までの経緯について深く語られています。
赤字と黒字
中国は、世界の強国と呼ばれる国が西欧諸国から新興国へ移り変わるという、歴史的変革の先頭に立っています。赤字で苦しむ金融帝国である西欧諸国と、数十年にも渡る黒字で資金力がある東アジア諸国を比べてみて下さい。もはや米国は製造あるいは輸出において権勢をふるってはいません。その役割を担っているのは中国を先頭とした東アジア諸国です。
中国は成長するに従ってより西洋化していくが、西欧諸国は過去3世紀に渡ってそうして来たように、これからも中心的存在でい続けることが出来るだろうと考えています。しかし、そのような考えは間違っています。
歴史は繰り返すという有名なことわざがあります。経済的窮地に立つ西洋諸国から、今、中国に覇権の座が移りつつあります。これは様々な意味で大きな影響が考えられるのではないでしょうか。
近代化
西欧諸国は、日本経済の歴史を中国の成長を学ぶ上での柱だと考えています。しかし、日本と中国が進む、近代化の道に共通点はほとんどありませんし、進んだ道も全く違います。1860年代、日本の今で言うエリートたちは、国の最も重要なものを守り、より産業化するために西洋化する道を自らの意志で、きちんと計算した上で選びました。
また、第二次世界大戦後、日本は飛躍的な成長を遂げます。わずか20年余りで日本は、牧畜農業経済から、完全産業化システムに切り替えたのです。日本は経済的に成長するにつれ、西洋を支持し、アジアの市場や大衆文化モデルに背を向けました。
毛沢東政権やそれに続く筋金入りの共産主義政権の崩壊、つまりスターリン主義の経済――5カ年計画および中央政府による成長を指示する試み――の失敗があり、中華人民共和国の設立初期(1949年から1978年)、中国は産業の発展のための第一歩を踏み出す準備を整えました。
市場、投資、投資家を求め、外に目を向ける準備を整えた時、経済基盤が整えられました。そして、中国は、民主主義かどうかではなく、継続的に経済成長していく能力が国にあるかどうかによって国の安定が左右される「新興国」のモデルとなったのです。
確かに、第二次大戦後の高度成長からバブル期までの日本の経済成長は目覚ましいものがありました。その流れと、今の中国の経済成長を見比べると、中国にもやがて訪れるバブルは弾ける可能性もあるという気がしてなりません。
中国は中国のまま
中国は今までどこかの国の植民地になったり、戦後の日本が米国に占領されたように、他の国に完全に占領されたりしたことはありません。多少の難はあっても、長年にわたって言葉や文化的優位性を維持してきました。中国は、世界の中心と言う意味で、自分達のことを「中国」と呼んでいます。移住者たちは時が経つにつれより中国人らしくなっていきます。
また、中国は、科学、数学、火薬、大型船、木版画、紙、海洋調査、文学など、他にも様々な分野を大きく発達させました。さらに、中国は国家試験制度を設け、世界でも最高クラスの公務員制度を築きました。そして、公務員の服従によって支配的な権力者層の最高権力を確保して来ました。
欧州諸国と異なり、中国は国に対抗する組織された宗教や財界および軍人のエリートは存在しません。集権的で自制的な政策立案者や法律の制定者が最高の支配権力を持ち、常に統治しているのです。
他国の支配をされず独自の進化を遂げた中国。王朝が幾度かわっても、民族を統治してきたのは彼らが持っている、独自の思想と意思によるものなのかもしれません。
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