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イノベーションはどんな遊びよりおもしろい――クレディセゾンを挑戦し続ける企業に変えた林野宏社長ビジネスイノベーターの群像(2/3 ページ)

後発ながら斬新なサービスを次々と打ち出し、今や3570万人(2010年3月現在)の会員を抱える日本最大級のクレジットカード会社となったクレディセゾン。今もその地位に安住することなく、新たな挑戦をし続けている。2000年から社長として同社を率いている林野宏氏に、イノベーションを生み続ける企業の条件を聞いた。

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「闘争心」と「創造力」がイノベーションの条件

 時代とともに、企業が成功するために求められるものは大きく変化する。

 「これまでの企業文化には、模倣、嫉妬社会と悪平等がまん延していました。そして、担当者が短期間で交代し、責任をとらない組織も多かった。これを続けていてはイノベーションは生まれません。模倣から“創造”へ、悪平等から、努力して新しいものを作り出した人を評価する“勝者賞賛の文化”へ、そして、自分がやっていることに“責任を取る組織文化”に変えなくてはなりません。グローバルで戦う力を持つためには、変革が必要です」(林野氏)

 このような時代の変化の波から導き出される、イノベーションを生み出す組織や人の条件は、2つあると林野氏は説く。1つ目は闘争心だ。

 人は、本能的に競争に勝ちたいという欲求、闘争心を持つと林野氏は言う。「多くの人がスポーツに熱狂するのは、仕事の中で競争の本能が押しつぶされている反動かもしれませんね。そして闘争心がなければ、人は時間通りに与えられた仕事をこなすだけになります」。競い合うことで初めて創造力が発揮される。

 '80年代、全国にカード発行拠点となるセゾンカウンターを展開し、カード会員獲得数急増を目指していたころ、大きな力となったのは中途採用の女性社員たちだった。「彼女たちは向上心が強く、闘争心にあふれていました。競い合って高め合い、そのおかげで月10万枚の会員獲得という目標が達成できたといっても過言ではありません」。

 勝つ喜び、負けるくやしさ。それはビジネスを成長させる原動力になる。ビジネスの基本も競争にあるからだ。勝たなくては生き残れない。

 ビジネスで勝つことは、それほど難しくはないはずだと林野氏は言う。必ずしもゼロから何かを生み出す必要はないからだ。「ライバルに勝つことだけ考えればいいんです。相手を観察し、違うことをやって裏をかくプランを考える。そして、マラソンと同じで、ゴールの瞬間に競争相手より1秒だけ勝っていればいい」。また、ビジネスはスポーツと違い、「毎日新しい勝負で勝つ必要はなく、競合を制するプランを打ち出せれば、それが365日積み重なって結果につながる」と説く。

 イノベーションに必要なもう1つの力は、創造力だ。同じことを毎日繰り返すだけでは、新しいものは生まれない。「頭が良くて勉強ができる人が必要なわけではないんです。好奇心があり、何かに夢中になれる人こそ、イノベーションの源になる。

 新しいものを創造するための感性を磨くには、たくさん音楽を聴いたり、絵を見たり、旅行をしたりし、まわりで何が起こっているかを観察することが必要だと林野氏は言う。「社員には、いつも『外に出なさい』と言っています。ただ、漠然と外に出るだけではダメ。感度の良いアンテナを立てて、好奇心を持って観察する。そうすれば、集めた情報や経験、知識が仕事のアイデアに生きてきます。これからはますます、感性が重要視される社会になっていくでしょう」。

イノベーションの歴史――クレディセゾン
時期 内容
1982年 「即与信、即発行、即利用」のスピード発行を開始。年会費無料化。
1992年 日本初のサイレンス決済を開始
2002年 有効期限を撤廃した「セゾンドリーム」(現「セゾン永久不滅ポイント」)を開始
2006年 オンラインショッピングモール「永久不滅.com」の運営開始

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