「大連立」のナンセンス:藤田正美の「まるごとオブザーバー」(1/2 ページ)
衆参ねじれ国会という現実を前にしては、大連立以外に道はない、そう考えているのだろうがはたして大連立で解決できるのだろうか。
菅首相が辞めることになって、にわかに民主党の次期代表選びが熱を帯びている。最も有力とされるのが野田佳彦財務大臣なのだそうだ。要するに、民主党の「主流派」である党執行部が推しているということだろう。ただ、何人もの「候補」が浮かんでいるという事実は、執行部自体の求心力が不足しているということの表れでもある。
それはともかく、野田氏は大連立に前向きだという。衆参ねじれ国会という現実を前にしては、大連立以外に道はない、そう考えているのだろう。たしかにこれが通常の時だったら、大連立でもしなければ政権を運営できないのかもしれない。普通にやっていれば衆議院で通した法律が参議院で否決されることになって二進も三進も行かない。ねじれていないときの民主党政権でも法案成立率は異様に低かった。ねじれ国会下ではそれこそ悲惨だ。かつて福田康夫首相が大連立を模索し、結局それがならずに政権を投げ出した。そしてその当時に、大連立を組むことより政権奪取を目指すべきであるとの「原則論」が強かったのが民主党である。
自民党が民主党にマニフェストの見直しを次から次へと求めるのも、足下を見ているからだ。民主党がマニフェストを放棄すればするほど、次の選挙で民主党の政策にはまったく現実味がないと攻撃することができる。もし放棄しなければ法案成立で協力しないという脅しをかけることもできる。どう転んでも損はないという読みなのかもしれない。
しかし問題は現在が「非常時」であるということである。あるところで「菅さんは気の毒な面もある。大震災に襲われたのだから」という意見を聞いた。たしかに巨大な自然災害によって政策の修正を迫られるという意味ではその通りだと思う。しかし、政治家としてはこれほど分かりやすい状況は少ない。
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロを思い出して欲しい。ジョージ・ブッシュ氏という前評判のあまり芳しくなかった大統領でも、テロ後の支持率は90%近くに達した。米国本土に対する「攻撃」にどう対処するか、次の攻撃をどう防ぐのか、やることは明確だった。つまり政治家として選択に迷う余地はほとんどなかったと言っていい(ブッシュ氏クリントン大統領のときには、在外大使館や米海軍艦艇に対するテロ攻撃に、巡航ミサイルで反撃することしかしなかったが、これがさらなるテロを招いたという批判もあった)。
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