J:COMと東急が横浜ケーブルビジョンを共同買収、CATVの新サービスを視野に
単独買収で規模を拡大させてきたJ:COMが初の共同買収を行う。鉄道会社との連携で、ケーブルテレビをインフラとした地域密着型の新たなICTサービスの展開を狙うという。
ケーブルテレビ大手のジュピターテレコム(J:COM)と東京急行電鉄(東急)は9月22日、相鉄ホールディングス傘下の横浜ケーブルビジョン(YCV)の全株式を共同取得すると発表した。取得規模は75億円で、取得後の議決権比率はJ:COMが51%、東急が49%となる。
2社が全株式を共同取得するYCVは、横浜市旭区、泉区、保土ヶ谷区の全域と西区、戸塚区の一部の29万2000世帯をサービスエリアとしている。2011年3月末時点の加入世帯数はテレビサービスが4万6000世帯、インターネット接続サービスが1万5000世帯。
株式取得完了後は、社長をJ:COMから、副社長を東急から指名し、非常勤取締役も両社から2人ずつ指名する。なお、当面はYCVの事業体制は維持されるとしている。
会見したJ:COMの森修一社長は、共同買収の狙いと意義について説明。同社のノウハウと鉄道会社の持つ「街づくり」のノウハウを融合させることで、ケーブルテレビをインフラとした新たな生活支援サービスを実現するとし、YCVの隣接地域ではJ:COMと東急傘下のイッツ・コミュニケーションズ(iTSCOM)がケーブルテレビサービスを展開していることから、2社の経営資源を有効活用できると述べた。
また東急の野本弘文社長は、2019年に東急と相模鉄道、JR東日本が相互直通運転を開始することを背景に、相鉄沿線と都心の結び付きが強化され、流入人口の増加などが見込まれることから、YCVのサービスエリアがケーブルテレビによる新たな生活サービスの展開において有望な地域だと説明した。
両社が掲げる新たなサービスの具体的な内容は、今後検討を進めるとしている。
ケーブルテレビの閉塞感の打破に
J:COMはこれまで14回の企業買収を経て、札幌、仙台、関東、関西、九州の約1330万世帯をサービスエリア内に抱える国内最大規模のケーブルテレビ事業統括会社に成長した。「トリプルプレイ」と呼ばれるテレビ、電話、インターネットの3サービスを中心に、近年は専門放送局への出資やKDDIとの協業を通じて事業規模を拡大させている。
森氏はケーブルテレビ市場を取り巻く環境について、少子高齢化に伴う単身世帯の増加や、通信事業者などの参入に伴う競争激化により、従来のケーブルテレビビジネスの柱であった多チャネルサービスやブロードバンドサービスの成長が鈍化していると語り、新たな展開が必要になっている。
今回の共同買収は同社にとって初めてのケースになる。これまで番組配信などで協業関係にあった東急と組むことで、単に事業規模を広げるだけでなく、新たなサービスの展開に腰を据えて取り組む姿勢を示した。
また、野本氏はかつてiTSCOMの社長を務めたこともあり、同社の地域サービスにおいてケーブルテレビが中心的な役割を果たすと強調。「iTSCOMの100チャンネルのうち、アナログで放送していた40チャンネルは、(地上デジタル放送への移行で)7月から空いている。これをどう有効活用するかがポイント」(同氏)という。
野本氏によれば、J:COMと東急でケーブルテレビの事業展開を検討していた最中で、「今回の話が(相鉄側から)打診されたため、将来に向けて共同買収に踏み切った」としている。
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