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社会のために働く、社会起業家という生き方に触れよう!会社人よ、社会人になろう!(1/3 ページ)

どんな仕事も社会に価値を提供している。人の役に立って対価をもらうことが商売の基本。その先に社会的な意味を見出したとき、誰もが社会起業家マインドを持つことができる。

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ソーシャルビジネスと社会起業家が注目される理由

 10月1日、社会起業大学4期生の入学式。社会起業家という生き方を志向する44人が4カ月の厳しくもワクワクする場に集いました。社会の様々な課題に正面から向き合い、その解決策を自らの「仕事=ライフワーク」として事業化しようとチャレンジする社会人学生たち。夜と土日に社会的事業の経営を学び、自分の事業計画づくりを行います。6割が会社員で、平均年齢35歳、最高齢71歳。筆者も講師として4度目の4カ月を共に過ごすことに喜びを感じつつ、10年後、彼らのビジネスが大きく花開いている姿を夢見ました。

 さかのぼること2カ月前。社会起業大学3期生の卒業式である「ソーシャルビジネスグランプリ2011夏」が開催されました。田坂広志名誉学長ら審査員7人を含む約400人の聴衆の前で、学生代表がどのような事業計画を発表したのか。その一部を紹介します。


 大岡さん・清輔さんペアの事業計画は「サンタクロースは世界を変える!! 〜今日からあなたもサンタクロース〜」。

 幼いころサンタが軽トラでやってきた話で見事に笑いをとり、プレゼンがスタートした。家族みんなが優しくなれるサンタの魅力、サンタに扮したボランティアの心の変化、貧しくてサンタが来ない途上国の子どもたちのこと、そして震災孤児にクリスマスプレゼントを贈る計画へと話が展開する。

 彼らの計画は既にボランティア団体として実施している「チャリティサンタ」を継続的事業に育てて全国展開すること。仕組みは、家族・保護者からの依頼を受けて、ボランティアのサンタが子どもにプレゼントを届け、費用の一部で途上国や被災地の子どもたちへのプレゼント(自立支援)を行うというものだ。家族・保護者は子どもと一緒にいままでにないクリスマスを過ごせると同時に、途上国に幸せを分けることができる。もう一つの狙いは誰もがサンタになれて優しくなれること。ボランティアサンタは「人に喜ばれる体験」という最も大きな幸せを手に入れるのだ。

 さらに「夏はどうするの?」などの疑問に答えるさまざまな仕掛けが用意されていて、冬のイベントだけではない大きな可能性を感じさせた。経済面では年会費1万円とすると1万人で1億円、10万人で10億円。なかなかの規模になり得る。数え切れないほどのサンタがハート型に並んで登場する最後のスライドは圧巻で、優しさの輪が会場全体を包んだ。


 このプレゼンは審査員特別賞を受賞しました。「子どもや孫のためにサンタを何度もやってきたが、この仕組みなら会員になって利用したい」との審査員のコメントに会場から大きな拍手が沸き起こりました。子どもが成長したとき、サンタのプレゼントにどんな意味が込められていたのか気づくでしょう。子ども自身が、途上国の子どものサンタになっていたのです。そして何よりも子どもの成長に感謝し、幸せを願う親の愛が、世代と国境を越えてサンタに関わる多くの人々にシェアされる仕組みに感動しました。愛の反対は無関心です。見えにくい日本の大きな社会課題「無関心」を変えていく可能性があります。

 栄えあるグランプリを獲得したのは60歳の新川さん。介護業界に元気な高齢者の力を送り込み、高齢者雇用と介護業界の人手不足の2つの社会課題を同時に解決するという「かい援隊100万人構想」をプレゼンしました。大手生命保険会社で37年間女性営業職の採用・育成・定着に携わった経験を生かし、60歳からのライフワークにチャレンジする姿に、田坂広志・審査員長から絶賛の言葉が贈られました。

 社会起業家が目指すソーシャルビジネスは、解決したい社会課題を中心に、関わる全ての人々を共感の輪でつなぎます。「あなた対わたし」の事業ではなく、「わたしたち」の事業であることが最大の魅力です。社会起業家たちは、働く意味を明確に語り、誇りある豊かな人生を見せてくれます。

 これは実は特別なことではありません。どんな仕事も社会に価値を提供しています。人の役に立って対価をもらうことが商売の基本ですが、その先に社会的な意味を見出したとき、誰もが社会起業家マインドを持つことができるのです。

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