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なぜ経営現場でドラッカーを実践できないのか――ドラッカーの哲学〜その1生き残れない経営(1/2 ページ)

経営実態を分析すればするほど反省するところが多く、経営のバイブルから得るところが大。しかし最近ドラッカーが世の人々の評判になっている割には、経営現場でドラッカーを実践できていないのはなぜか。

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 このようなアゲンスト(逆風)の時こそ、マネジメントのあり方を問い直す意味がある。フォロー(順風)の時は、何をやってもほぼうまく行くものだ。その典型が、日本の高度成長期である。トップや経営陣は、元気さえ良ければその資質はあまり問われなかった。

 そこで、「マネジメントの発明者」とも呼ばれるピーター・F・ドラッカーの名著「マネジメント」(上田惇生訳 ダイヤモンド、 以下の引用部分は断りのない限り「マネジメント」から)に立ち帰り、現在の日本の経営・マネジメントの実態について分析を試みよう。

 経営実態を分析すればするほど反省するところが多く、経営のバイブルから得るところが大きいに違いない。しかし特に最近ドラッカーが世の人々の評判になっている割には、経営現場でドラッカーを実践できていない。なぜか。今後の記事連載の中で随時ドラッカーを取り上げながら、経営現場の実態の中からその原因を抉り出し、対策を探っていこう。

 ただし、最初に基本的なことで確認しておきたいことがある。ドラッカーは、単なる経営学者ではないということだ。社会科学者でもあり哲学者でもあり、はたまたその著述から文学者の趣さえうかがえる、極めて幅広くかつ奥の深い学者だ。重要で見逃してはならないことだが、ドラッカーがその書「マネジメント」の中で現代社会とマネジメントとの関係を語るくだりに、ドラッカーの特異な哲学、あるいは彼の思想の真髄を垣間見る思いがする。

 即ち、あらゆる先進社会が組織社会になったことにより、主要な社会的課題はすべて組織の手にゆだねられた。人の命とまではいかなくとも、現代社会の機能がその組織の仕事ぶりにかかっている。そしてその組織は、マネジメントによって運営される永続的存在である。

 組織が機能するには、マネジメントが成果を上げなければならない。従って、社会の願望・価値・存続そのものが、マネジメントの成果・能力・意思・価値観に依存する。ドラッカーは、「社会と経済の発展をもたらすものはマネジメントである」とまで言い切る。そして、マネジメントが所有権・階級・権力から独立した存在でなければならないとする。

 そもそもドラッカーは、自らを生物環境を研究する自然生態学者とは異なり、人間によって作られた人間環境に関心を持つ社会生態学者と規定している。彼の関心・興味は企業の世界にとどまらず、社会一般の動向にまで及び、人を幸福にすることにあった。そのためには個人としての人間よりも、社会(組織)の中の人間にアプローチする必要があるとした(このフレーズ部分は、Wikipediaより引用)。

 なぜ経営現場でドラッカーを実践できないかを論ずる時、以上のようなドラッカーの思想の深さを認識しておく必要があろう。

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