ITmedia エグゼクティブセミナーリポート
「想定外」に企業が対応するための勘所とは 安井あらた基礎研究所所長(1/2 ページ)
東日本大震災で生じたサプライチェーンの混乱は、被災していない企業にも大きな損失を与えた。自社のみの被災を想定したBCM(事業継続マネジメント)では不足であり、多くの企業がBCMの抜本的な見直しを迫られている。
9月6日に開催された経営者向けセミナーイベント「第22回 ITmedia エグゼクティブセミナー」の特別講演で、あらた監査法人 あらた基礎研究所 所長の安井肇氏は、「想定外」の状況に対する備えについて論じた。
サプライチェーン全体の中で考える
「リーマンショックは100年に一度、東日本大震災は1000年に一度、いずれも想定外と言われるが、どちらも、それだけで済んでいれば、これほど大きな問題にはならなかった」と安井氏は語る。例えば(2008年に中国で発生した)四川大地震は、死者数では東日本大震災より多かったが、被災地域がグローバルなサプライチェーンに組み込まれていなかったので、経済的な影響は東日本大震災ほどではなかった」という。
東日本大震災では、自動車部品や半導体のメーカーが数多く被災した。その影響が自動車メーカーのサプライチェーン全体に波及し、生産の抑制を余儀なくされた。リーマンショックでは、欧米を中心として消費が減り、やはり日本の製造業に打撃を与えた。原因も様相も異なるが、いずれも結果としては日本経済に深刻な影響を与えている。自社のみを考慮したBCMでは十分な対策といえず、自社だけでなくサプライチェーン全体に配慮する必要があるといえるだろう。
「企業におけるBCMの意義は、自社の価値創造過程を越えた『外部経済性』にある。直接には逸失利益を防ぐなど自社のために役立つものだが、供給責任を果たすなどして取引先の利益を守り、さらには地域秩序などを守り、そして投資家の利益をも守ることである。特にサプライチェーンの中ほどにいる企業は、取引先に対して情報発信を行わないとサプライチェーンの中から自社が排除されるリスクもある」(安井氏)
BCMによる外部経済性は、巡り巡って自社の利益にもつながってくる。例えば、安井氏は、新型インフルエンザが発生したと報じられた際の株価動向の調査結果を挙げた。新型インフルエンザが確認されたメキシコで事業を展開している企業群の株価は翌日から下落傾向が続いたが、その中でも事前にBCMを開示していた企業群は3日後には株価が回復、4日目には以前より上昇していたというのだ。開示されていたBCMを投資家も評価した、と考えられる。
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