革新し続ける企業:海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(1/3 ページ)
50周年を迎える企業は5%である。人に寿命があるように企業にも寿命があるといわれるが人間とは違い企業の死は避けられる。生き残っている企業は何が違うのか。
この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。
3分で分かる「革新し続ける企業」の要点
- 全企業のおよそ半分が、10年以上存続できない。30年続く企業はわずか15%で、50周年を迎える企業はたった5%である
- だが、人間とは異なり、企業にとって死は避けられないものではない
- 「自己効力感」が欠如すると、人は忍耐強く目標を達成することができなくなる
- 人は、成功を妨げる「心理的バイアス」に陥ってしまう
- 神経科学の研究によって、人間の脳には新しい情報や行動に再び順応する能力があることが分かった。企業もまた、順応し、革新的になることができる
- 人間も企業も「固く」なり、それによって革新し再生する能力が妨げられてしまう
- 密度の高い官僚制度や徒労感は、企業の妨げになる恐れがある
- 成果を重要視し、報酬を適切に組み合わせる企業文化は、従業員の活躍と成長を促す
- 現状を維持すれば、企業は過去から抜け出せなくなる。賢くリスクを背負い、新しい能力を素早く確立すること
- 何十年にも渡り生存している企業は似たような特性を持っている。継続的な学習を促進し、前向きに物事を捕え、実行する文化を促進している
この要約書から学べること
- なぜ企業のほとんどが人間のように成長し、老化し、死んでいくのか
- 行動経済学、心理学、社会学、神経科学から、企業の寿命を延ばすために学べること
- 「革新し続ける企業」はどうやって不利な状況を取り除き、何十年にも渡り生き残り成功しているか
本書の推薦コメント
企業は人間と同じように、自然なライフサイクルをたどります。この世に生を受け、成長し、人生を享受し、死んでいきます。全企業のうち、30年間生存できるのはわずか15%しかありません。さらに、50周年を迎えられる企業はたったの5%です。
ですが、中には、不利な状況を跳ね除け、平均寿命を超えて何十年も製品を作り続け、貢献し続ける企業が存在します。このような「革新し続ける企業」は、ずっと変化し続け、改革し続け、変わりやすい市場と環境に適応し続けています。
マッキンゼー社のクラウディオ・フェザーは、経済学、社会学、神経科学、心理学を深く掘り下げており、その1つずつをビジネス小説の形で取り上げています。フェザーは、長寿企業が競合社よりも優れ、長続きしている理由を理解する手助けをしてくれています。
また、自分の会社を作り変えた素晴らしいCEOであるカール・バーガーに関する好感のもてるエピソードを軸に、企業リーダーが本書で語られる最新の研究成果を経営、人事、認知科学、そして企業の寿命を延ばすために応用する方法を説明しています。この創意に富んだ、広い範囲を網羅した本書を、企業の若さの源泉を発見する方法を知りたいと願う経営者に薦めます。
企業とは、一般的に経済的効果を創出する組織体のことを差します。そしてこの組織体を保ち続ける構成要素は未来永劫に存在するものとはいえません。つまり、人や生物同様にこの組織という存在にも必ず寿命があるのです。
日本に於いては、数年前に、会社法が改正になり資本金が撤廃されるなどの大きな変革があり、旧来の法律に比べて、会社設立が非常に簡単になったことからも、新しい会社を設立する人が格段と増えました。しかし現状の先行きの見えない経済不況の中で設立した会社の中には、スムーズに利益を上げるどころか、むしろ短期間で資金繰りが焦げ付き倒産に至るといったケースも少なくないようです。
本書では、全企業のおよそ半分が10年以上存続できないと言及していますが、実際、各業種別リサーチによると1年以上存続可能な企業は半分にも満たないとの実態も判明しています。過去、企業ライフサイクルの調査結果では、会社の平均寿命は30年といわれた時代もありましたが、現在の会社の平均寿命はわずか5年というデータ結果も出ています。
では、企業が寿命を伸ばしていくにはどうしたら良いのでしょうか? また、50年以上も運営を続けるいわゆる老舗とは他の企業とどのような違いがあるのでしょうか?
本書「革新し続ける企業」では、どのような企業施策が寿命を伸ばしていけるかという点について鋭く解説をしています。そして、そのために重要な留意すべくポイントを順追って学び取ることができます。企業経営者や役員の方にはすすめたい一冊です。
企業の寿命を延ばす
カール・バーグが、国際企業であるアメリカン・ヘルス・デバイス社(AHD)に新しいCEOとして就任した時、経営陣は分裂し、革新は後れを取り、収益は落ち込み、訴訟は未解決状態でした。バーグの妻グウェンは、企業の寿命について研究している友人を夫に紹介しました。
1960年のアメリカトップ企業50社のリストと2010年の同じリストを比べると、1960年にランクインしていた企業の3分の2が2010年のリストには載っていませんでした。より力強く活気のある新規企業によって、モービル社、RCA社、ジェネラル・フード社などのリストに載らなかった企業は負けてしまったのです。人間と同じように、ほとんどの企業が、誕生し、成長し、成熟し、死ぬという一生を送ります。
上場企業の半分が10年以内に死に、30年存続する企業はわずか15%、50周年を迎えられるのはたったの5%です。数少ない長生きする企業は、「革新し続ける企業」です。このような企業の死亡率の実態は、経済学者のヨーゼフ・シュンペーターが唱えた経済革命の「創造的破壊論」と一致します。
しかし、企業の死は、絶対に回避できないものではありません。衰えて行く企業の残骸は、新しい成長とビジネスの種を持っています。企業の衰退の原因を理解すれば、最新の研究成果を生かすことで、衰退の原因を取り除き、企業の人生をより長く、より生産性の高いものにするための合理的な手掛かりを得ることができます。
「形あるものはいつか壊れる」とは企業も一緒です。しかし、法人とはよくいったもので、生身の人間同様に、免れない死に変わり、新しい種を持ち、それを残していくことができるのです。
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