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テクノロジでビジネスにイノベーションを興す時代が来たGartner Column(1/3 ページ)

世界中のCIOが何をしようとしているのか、ビジネスや経営はITに何を期待しているのかを浮き彫りにした。今年の結果はエキサイティングだ。

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 先日、このコラムでも案内した「ガートナー エンタープライズ・アプリケーション サミット 2012」に、多くの読者の来場、本当にありがとうございました。壇上から、当コラムの読者を尋ねたところ、手を挙げてくれた人も少なくありませんでした。皆さまのお陰で、ホームグラウンドでプレーする選手のように、生き生きと話すことができました。改めまして御礼申し上げます。

 実は、あの日は、わたしの講演がサミットとしては最後だったのですが、その後に、同会場にてエグゼクティブ プログラムとして国内のCIOに「CIO アジェンダ2012」を初公開しました。

 このCIOアジェンダは、読者にはお馴染みかもしれませんが、昨年の10月から12月までの間に実施したガートナーCIOサーベイ2012の結果を集計・分析し、世界中のCIOが何をしようとしているのか、ビジネスや経営はITに何を期待しているのかなどを浮き彫りにしています。わたしは、このCIOアジェンダをガートナーで働き出した2006年から日本のCIOの皆さんと一緒に調査結果を見てきましたが、今年ほどエキサイティングな結果だったことはありません。

テクノロジでビジネスをイノベートせよ

 ガートナー エグゼクティブ プログラムでは、今まで「CIO・ITエグゼクティブは、ビジネスを理解せよ。そしてビジネスに正面から向かい合え」と言い続けてきました。これは、企業(もちろん政府などの公共組織も)において、ITはなぜ存在するのか? という存在意義そのものを説いていたのです。

 企業内のITは、その企業の生業を支援するために存在しているのであって、他の目的でITが存在することは一切無いからです。もちろん、今年もベースは変化しませんが、明らかにビジネスをテクノロジでリード(主導)するトーンに変わったのです。いや、今までも、似たようなことは言ってきました。

 しかし、今までは、フロントビジネスに直接的なテクノロジ利用を推進しようとは言いませんでした。ビジネスプロセスを改善し、新たなプロセスをITに実装することにより業務改革を成功させよう、そのためには、ITが主導しなければならない、というトーンだったのです。

 今年からは、随分と方向性が変わりました。ITとは、コンピュータシステムとそこから生み出される情報・データの利用という意味合いですが、われわれに利用を促しているのは、すべてのテクノロジを指しています。決してトランザクションを処理してくれる従来のITだけを指していません。

 ガートナーでは、この3〜4年言い続けているITのコンシューマライゼーションというような、スマートフォンやタブレット端末を利用したテクノロジなども総動員して、ビジネスのあり方を従前と違うものにしようとしています。端的に言うならば、「テクノロジの力でビジネスをイノベートせよ」ということになります。

2010年代におけるITへの期待

 表1を見てください。CIOサーベイの集計結果として毎年発表している「CIOがビジネス戦略面で優先する事項は何か?」のランキング表です。2011年から優先順位が大きく変化していることが分かります。2012年では、13位にランキングされている「ビジネスプロセスを改善する」ですが、これは、2005年から2010年まで、連続6年間第1位を保っていました。この項目は、昨年でも第5位に低下していましたが、とうとうベストテン圏外になってしまったのです。では、2000年代にダントツで強かった項目を蹴落として第1位に輝いたのは何だったのでしょうか。


表1:ビジネス戦略が要求していること

 「ビジネス成長を加速する」です。ビジネスプロセスの改善は、その効果を「顧客経験価値を向上させる」ことにフォーカスしていたものの、実質的に、企業組織内部への働きかけであることは否めません。しかし、「ビジネス成長を加速する」こととは、新たな市場を開拓したり、競合他社と取引のある顧客を自社に引き寄せたり、既存の顧客にさらに新たなる価値を提供していくということになるでしょう。

 つまり、このことは、企業組織内部への働きかけではなく、組織外への直接的な働きかけであることを示しています。この傾向が、表1からも明らかなように2011年以降(2010年代に入って)急激に現れたのです。

 ガートナー エグゼクティブ プログロムでは、2010年という年を「節目」の年として2008年頃から、世界中のCIOに向けてITとITを取り巻く環境が大きく変化するに違いないと提言してきました。

 それは、今までITに何の興味も示さなかった人々(経営トップかもしれないし、ビジネス部門のトップかもしれない)が、スマートフォンや、タブレット端末、毎日のように新聞紙上を賑わしていた「ソーシャルメディア・ネットワーク」という言葉によって、本質を本当に理解できているかどうかは別として、「“これらのテクノロジ”が世の中を変えている、当社はこれらのテクノロジを利活用する準備はできているのか」などと考えるようになると確信していたからです。

 経営トップや、ビジネス部門のトップは、(ITを含む)テクノロジの専門家でないことが多いでしょう。しかし、現状の自社のビジネスが、従来の延長線上で大きな企業成長を望めないことは、誰よりも理解しています。そして、今までとは違う取り組みが自社には必要だということも理解しています。今までとは違う取り組みに、救世主のように現れたのが、ITのコンシューマライゼーションだったのです。

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