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顧客がまだ感じていないニーズを創造する「インベンターに」──成長を続けるアマゾン ジャパンのジャスパー・チャン社長(1/2 ページ)

次々と顧客を驚かすサービスを提供してきたアマゾンだが、一朝一夕に生まれたわけではない。日々小さなことでも改善し続ける努力のたまものだった。

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 1995年に創業、今や欧米を中心に9カ国で事業を展開している米国のアマゾン・ドット・コム。日本では5カ国目として2000年にAmazon.co.jpを開始し、全国に10カ所の物流センターを持ち、幅広い在庫と流通ネットワークを武器に成長を続けている。今年4月には新社屋に移転し、初めて十数名の新卒採用も行ったほか、年内には電子書籍事業を本格スタートすると発表し、注目を集めている。アマゾン ジャパンを、事業立ち上当初から率いてきたジャスパー・チャン社長に、Amazon.co.jpの独自性や成長の秘密について聞いた。

われわれが何をすべきかはお客様が決める

 Amazon.co.jpが始まった2000年ごろ、日本でも多くのネットショッピングサイトが誕生していたが大半が姿を消している。何が分かれ目になったのだろうか。チャン氏は真っ先に同社の変わらない戦略を挙げる。


アマゾン ジャパンのジャスパー・チャン社長

 「1995年のアマゾン創立時からミッションもストラテジーも変わっていない」(チャン氏)

 「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」を実現するために日々努力してきた結果、拡大し続けることができたという。

 「アマゾンでは、“売上○○億円”というような目標を掲げるのではなく、お客様のニーズに応える企業を目指してきた。われわれが何をすべきかはお客様に決めていただく。変わるることなくこれを貫いてきたことが、今日まで成長し続けている大きな理由だったのではないか」(チャン氏)

 ただ、今の市場では、お客様自身も「何が欲しいのか」を明確に表現しない。お客様に「決めてもらう」といっても、決して受身の状態ではいられないのだ。「そこで、お客様自身も予測できない、まだ感じてすらいないニーズを創造する(invent)することが必要だ」とチャン氏は強調する。

 社内ではよく、「インベンター(inventor:発明者、創造者)になれ」という話をするという。「発明」というと大げさに聞こえるが、チャン氏が言うそれは必ずしも大きなものではない。小さなインベンションを尊重し、積み重ねる地味な努力が求められる。同社はオペレーションの現場を重視しており、そこでのインベンションは、日本の製造現場から生まれた「カイゼン(改善)」とほぼ同義にとらえられているようだ。

 「例えば、物流センターでは、梱包する箱をいかに小さくし、どうすればわれわれが梱包しやすく、そしてお客様が開けやすくなるかなどの、細かなカイゼンを重ねている。小さいものであってもカイゼンのインパクトは非常に大きく、こうした積み重ねが“カスタマー・エクスペリエンス(顧客経験価値)”の向上につながる」(チャン氏)

 社員全員が顧客満足のためにリーダーとして責任を持ち、部門の垣根を超えて提案、実践し経験を共有する企業文化が今の結果を生み出している。

採用も育成も「社員全員がリーダー」の指針で

 顧客中心の思想はもちろん、オペレーションの現場だけではなく、すべての場面で深く浸透しているという。アマゾン ジャパンの社長に就任するまでは、航空会社や総合化学メーカーで働いていたが、アマゾンの特徴は「はるかに顧客中心の発想が強い」と話す。

 「経営層の会話はもちろん、プロジェクトを立案するときにも、システム開発をするときにも、“カスタマー・エクスペリエンス”という言葉が頻繁に出てくる」(チャン氏)

 こうした文化は、チャン氏が入社した当時から変わらない。しかし、会社が成長し社員が増えるにつれ、ビジョンを共有して組織文化を強化するためには工夫が求められるようになってきた。このため同社では3、4年ほど前に、「社員全員がリーダーである」として14項目からなる「Our Leadership Principles」(私たちのリーダーシップ指針)を定めた。

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