なぜ社長はクラブに通うのか:人生はサーフィンのように(2/2 ページ)
悩みごとはほどよい距離感がある人に相談した方が良い?――サーフィンのように楽しみながら人生の波を乗り越える考え方、今回は第三者に話を聞いてもらうメリットとポイントを紹介しましょう。
話を聞いてくれる人を選ぶポイント
人に話を聞いてもらう際、適切な相手を選ぶと気持ちよく話せます。ではどんな人を選べばよいのか、ポイントをいくつか挙げてみましょう。
話を奪わない人
「今日は話し過ぎた」という言葉は聞いても、「今日は聞きすぎた」という言葉はあまり聞かないように、人は「自分のことを話したい生き物」です。中には、こちらが相談を持ちかけているのに、「あ〜、分かる分かる。オレもそうだったんだよ。オレの場合は○○でさ〜、本当困っちゃったんだよね〜」など、いつの間にか聞き手と話し手が入れ替わってしまう場合があります。
こちらの話を奪わなさそうな、聞き上手な人を選ぶといいでしょう。あなたの周りにも1人ぐらいいませんか。聞き上手な人が。
このような話をすると、「一方的に相談に乗ってもらうのは申し訳ない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。それは、私もよく思うことです。けれども、以前ある方に悩みごとを相談したら、その方からはこんな声をいただくことができました。「大切な悩みを打ち明ける相手に私を選んでくれて、ありがとう」。相談って実は、される方もうれしいのかもしれませんよ。
なお、話を聞いてもらったら、違う機会に話を聞いてさしあげることも忘れずに。
批判や助言をせずに聞いてくれる人
「相談に乗るよ」と言ってくれる人の中には、「あなた、そんなことじゃだめよ。こうすべきよ」「でも、それじゃ上手くいかないんじゃないか。こっちの方がいいよ」など、一言目でまず否定し、二言目には意見を押し付けてくるような、おせっかいな人もいます。もちろん、相手は良かれと思って助言してくださるのですが……。
問題を解決するための答えは、人それぞれ違います。いろんな助言はありがたいですが、「とにかく、話を聞いてほしい」というシーンもあります。あまり批判や助言をせずに、ただ話を聞いてくれる方を選ぶといいでしょう。
同じような経験を持っている人
似たような経験をしている人は、こちらの苦しみや悩みを理解してくれようとしてくれます。職場の同僚や先輩など、過去に自分と同じ経験をしている方に相談してみるのも1つの手です。
前出の社長とクラブのママさんは、「経営者」「リーダー」という同じ立場を経験しています。社長がママに話して癒やされるのは、ママが経営者としての悩みや人をまとめる難しさを、誰よりも理解してくれるからなのでしょう。
立場が違う人
「同じような経験を持っている人」と逆説的になるかもしれませんが、仕事に直接関係のない、立場が違う人に相談するのもいい方法です。
前出の社長とクラブのママさんは、業界的には「建設会社」と「飲食店」と関連性はありません。けれどもママさんのちょっとした発言が、社長の意外な気づきやヒントになるのかもしれません。
ほどよい距離感がある人
職場の同僚や家族など、自分と距離が近い人とは話をする機会を作るのが容易な反面、本音を言いづらいことがあります。
そのような場合は、以前は仲が良く、最近はあまり会っていない学生時代の友達など、ほどよい距離感がある人と話すといいでしょう。
また、直接的な関係性のない、外部の専門家(コンサルタントやコーチ、カウンセラーなど)に聞いてもらうのもいい方法です。
以前、知人にキャバクラに連れて行かれました。これまでの経験上、その手のお店は「女性を盛り上げるためにこちらが頑張らなければならない」ことが多く、気を使わずにゆっくりお酒を楽しみたい私はあまり得意ではありません。でも付き合いもあり、渋々出かけたのですが――
「また来たい!」と私は思いました。
そのお店は、接客が素晴らしかったのです。相手をしてくれた女性がとにかく「聞き上手」で、私が思っていることを気持ちよく話させてくれました。
その経験があったので、冒頭の社長の話を聞いたとき、私には社長の気持ちがとてもよく分かりました。「私もまたあのお店に行って、あの女性に話を聞いてほしい」と思うのですが、もう10年近く前の話。お店の場所も、女性の名前も覚えていないのが残念なところ。
実際のところは、私にはコンサルタントやコーチ、カウンセラーなど知り合いが多いので、専門家に話を聞いてもらうことが多いのですが、たまには「マイ眞野あずささん」を求めて、夜のネオン街をさまよってみたいものです。
夜のお店に限らず、あなたもときには本音を誰かに話してみてください。普段、気持ちの内側に抱えている荷物を下ろすことができるかもしれませんよ。
著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)
NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。自動車メーカー、ソフトウエア開発会社を経て、現職。プレッシャーの多い職場で自身が精神的に追い込まれる中、リーダーを任される。コーチングや心理学の手法を実践しチーム変革に成功。難しいコミュニケーションスキルを誰もが使えるようにした「トライアングルコミュニケーションモデル」を考案。思考法やコミュニケーションをテーマとした研修・セミナー・講演・執筆活動を行う。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。
連載記事「人生はサーフィンのように」をeBook(電子書籍)にまとめた「やる気が出ない本当の理由」を発売。詳細はこちら。
サーフィンのように楽しみながら、人生の波を乗り越えよう。竹内義晴さん執筆人生はサーフィンのようにのバックナンバーはこちら。
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