“悩み”が作るクリエイティブな時間:人生はサーフィンのように(2/2 ページ)
悩みは自分とトコトン向き合うチャンス――悩みをきっかけに「自分の本当にやりたいこと」を見つけた竹内さんが、悩みとの向き合い方をにこやかに伝授します。
悩むというクリエイティブな時間
私が進路や将来に悩んでいる皆さんに大切にしてほしいのは、「答えを外に求めるのではなく、自分に求めること」「目の前の課題と向き合うこと」。そして「『悩む』というクリエイティブな時間を大切にすること」です。
・答えを外に求めるのではなく、自分に求める
明確な答えを見つけられないとき、すでにその経験をしている人に相談したくなるのは当然のことです。けれども相談した結果、冒頭の掲示板のような多様な意見に触れると、すべてが正しいように思えて、益々悩んでしまいます。
そのようなときは、情報を外に求めるよりも、自分と対話してみませんか。「いや、そもそも自分で答えが分からないから悩んでいるのに、自分に答えを求めたって何も答えは見つからないでしょう」と思われるかもしれません。
私は、幾つかの選択肢で迷い「これはやりたいことか」を考えるとき、「やりたいことかどうか」よりも先に、「絶対にやりたくないこと」を明確にすることにしています。絶対にやりたくないことを明らかにすると、本当にやりたいことが浮かび上がってくることがあります。絵を描くときに対象物を直接描くのではなく、対象物の周りを描くことによって、対象物を浮かび上がらせるようなイメージです。
また、「自分の答え」自身が感覚的に教えてくれることもあります。例えば、就職先としてAとBの2つの選択肢があったとします。お金の面や待遇など、論理的に考えれば「絶対にAの方が有利」なのに、「何だか、Bの方がいいような気がする」という場合があります。そのようなときはふと抱く感覚も大切にし、「何がこの感覚を抱かせるのか」を自分自身に問うてみましょう。ふと抱く感覚も、何かを知らせてくれる大切な情報です。
・目の前の課題と向き合う
私はやりたい仕事をしている方だと思いますが、「やりたいことを見つけよう」と思って出逢ったわけではありません。むしろその逆で、きっかけは目の前にあった悩ましい課題に取り組んだことでした。
私にとってその課題は本当に嫌なもので、早く逃げ出したい一心で仕方なく取り組み始めました。しかし試行錯誤を繰り返し次第に課題が解決していくうちに、「自分にもやればできるじゃないか」「少しずつ成長している感じがうれしい」「この仕事、結構楽しいかも」となり、「この仕事をやりたい!」に変わってきたのです。
周りの人がやりたいことを見つけてイキイキ活動している姿を見ると、つい焦ってしまいますね。やりたいことを探すために外部に情報を求めたくもなるでしょう。目の前の望ましくない体験が、やりたいことを見出してくれるきっかけになる場合があります。今やりたいことが明確ではなくても大丈夫。「やりたいこと探し」をするなら、目の前の課題に向き合うことで本当にやりたい仕事が見えてくることもあるのを知っておいてください。
ちなみに私にとっての「本当にやりたいこと」とは、誰かが発信している情報を見て“あれはいいな”と「頭で解釈する」「論理的に考える」というよりも、「体の芯から納得する」「体の内側からジワジワ湧いてくる」というような感覚でした。子どもたちが遊ぶことにわざわざ理由などつけないように、「やりたいからやる」というシンプルな感覚です。
・悩むというクリエイティブな時間を大切に
「悩む」という時間は、あまり心地よいものではありませんね。できれば早く解放されたいと誰もが思うことでしょう。もちろん、私もそうです。
けれども、悩むことはとてもクリエイティブな時間であることを忘れないでください。悩むからこそ、自分の将来を真剣に考えるきっかけが生まれ、解決策を導くことにつながり、導いた答えに自信が持て、納得感が生まれるのです。
「これで、本当にいいのだろうか」……悩む時間が多いほど、クリエイティブな時間を過ごしていることになります。これは、多くの成果を出している方が歩んでいるプロセスです。
この記事は主に若い方に向けて書きましたが、悩むのは若い世代の皆さんだけではないのかもしれませんね。私もいつも悩んでばかりです。悩んでいる時間は本当に苦しくて、手っ取り早く解決したいです。
けれども現代のような先行きが不透明な時代には、インターネットを使ってチャチャッと見つけた答えよりも、苦しみながらも、自分で考えて答えを出していくことの方が尊い時間になると思います。そういう時間の中から、本当にやりたいことが見つかっていくのではないでしょうか。
私も、悩み続けます。
著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)
NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。自動車メーカー、ソフトウエア開発会社を経て、現職。プレッシャーの多い職場で自身が精神的に追い込まれる中、リーダーを任される。コーチングや心理学の手法を実践しチーム変革に成功。難しいコミュニケーションスキルを誰もが使えるようにした「トライアングルコミュニケーションモデル」を考案。思考法やコミュニケーションをテーマとした研修・セミナー・講演・執筆活動を行う。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。
連載記事「人生はサーフィンのように」をeBook(電子書籍)にまとめた「やる気が出ない本当の理由」を発売。詳細はこちら。
サーフィンのように楽しみながら、人生の波を乗り越えよう。竹内義晴さん執筆人生はサーフィンのようにのバックナンバーはこちら。
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