“実現可能性の呪縛”を取り払え!:人生はサーフィンのように(2/2 ページ)
「自分の実力なら、この辺りは確実だろう」「今の自分には、これぐらいが妥当だ」――あなたは知らず知らずに、実現可能性の呪縛で自分の可能性をせばめていないだろうか?
ステップ1:制限を外す問いかけをする
まず“実現可能性の呪縛”を取り払う必要があります。そのための便利なマジカルクエスチョンはこれです。
もし、学歴も、資格も、年齢も、性別も、金銭的な面も、何の制限もないとしたら、私は何をしたいだろう
明日の朝、目が覚めたら何でも叶っているとしたら、何を叶えたいだろう
ひょっとしたら、もう一人のあなたが「そうは言っても現実には……」とつべこべ言い訳を始めるかもしれませんが、取りあえず黙っていてもらいましょう。
ステップ2:夢が叶っている姿をリアルにイメージし、具体的にする
次に、それが叶っている状況を具体的にイメージします。頭で論理的に考えるのではく、想像するのです。目を閉じ、まぶたの裏側を映画のスクリーンのように見立て、そこにやりたい仕事をしている自分のシーンを想像し、アリアリと映し出してみます。ポイントは、「もし、○○だったら」と、現在から未来をイメージするのではなく、それがすでに叶っている状況をイメージすること。さらに「どんな場面で」「誰と」「何をしていて」「どのようにそれをしているのか」「それはいつごろか」のような、5W1Hの観点で自分自身に問いかけて、映像を具体化してみるといいでしょう。
また、その映像を見ながら、やりたい仕事が実現できたら周囲の人からかけられそうな言葉を考え、聞いてみます。「○○さんのおかげで△△できました。ありがとう」「○○さんと一緒に仕事ができて本当に幸せです」というような顧客や仲間からの評価の声です。
さらに、その仕事をしているときにどのような気持ちを抱いているのか、何を感じているかを体で味わってみます。充実感や楽しさ、心地よさといった体の反応が得られるでしょう。イメージは物理的な制限や実現可能性がなく、自由です。五感を使って夢が叶っている将来を見て、聞いて、感じてみます。
ステップ3:小さな行動計画を立てて実行する
ステップ2で具体的にした内容に関連することで、今の自分でも無理なくできそうなことを実際にやってみます。あまりハードルが高いと「やっぱり、できないかも……」と“実現可能性の呪縛”が顔を出し始めますので「無理なくできる」がポイントです。小さな行動の繰り返しが、やりたい仕事にあなたを近づけてくれます。
冒頭の「カウンセラーになりたい」と言っていた方も、最初は年齢や資格などの実現可能性にがんじがらめになって、夢を諦めてしまいそうな雰囲気でした。
そこで、ステップ1〜3を使って問いかけてみたところ、「カウンセリングルームを開き、相談を受けている」「そこに来ている相談者は、今、勤めている会社の人」「相談者は『今まで相談できる人が1人もいなかった。相談できる人が身近にいて本当に良かった』と言っている」「相談者の役に立ててうれしい」と、具体的なイメージが思い浮かんできたのです。
そこで、無理せずに今できることは何かを尋ねたところ、「学んでいるコミュニケーションスキルを今の職場で実践し、実力をつける」「今までの苦しかった体験を情報発信する」などを挙げました。
「今までは雲をつかむようで不安でしたが、将来のイメージが具体的になって納得感が得られ、今できることが分かってやる気が出てきました。今日、出てきたことを実践してみます」と笑顔で帰っていきました。
「こんなことをしたって、夢なんか叶うわけないじゃないか」とお思いのあなた、侮るなかれ。私が実際に使っているノートをお見せしましょう。
これは2007年に独立したとき、「将来○○になっていたらいいなあ」ということをリアルに想像し、将来忘れないようにシーンごとにイラストに描きとめておいたものです。「2008年、スクリーンの前で講演している」「2012〜2016年、机に向かって本を書いている」「2016〜2020年、尊敬するKさんと同じステージで講演している」などが書かれています。
実現可能性で考えれば、講演することも、本を書くことも、Kさんと同じステージに立つことも、独立したてで無名の私にはすべて叶わぬ夢でした。けれども、「できるか/できないか」で迷い何もしないことを選択するよりも、ほんのわずかでもいいから自分でできることをやる方が大切だと私は思いました。とはいえ、将来をイメージしたことの中で当時の私にできることといったら、メールマガジンやブログで経験を書き綴ることぐらいだったのですけれど。
あれから5年、私が現在どうなっているかと申しますと、メールマガジンがきっかけになって本を書きました。ブログや知人の紹介で講演の機会をいただくようになりました。尊敬するKさんとの講演はまだ実現していませんが、お会いしてお話させていただくところまではできました。
Kさんと同じステージで講演する実現可能性は今のところまだまだ低く、「できるか/できないか」で考えると「できない」になるのが現状です。けれども、実現可能性で判断せず、今の私にできることを淡々とやっていきます。
もしあなたが、“実現可能性の呪縛”にとらわれていたら、一度「実現可能か」「できるか/できないか」から離れ、その夢がすでに叶っている状況をイメージしてみてください。そして、イメージの中にあることの中で、今の自分にも無理なくできることをやってみてください。あなたにも新しい可能性が広がるはずです。
一緒にがんばりましょう。
著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)
NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。自動車メーカー、ソフトウエア開発会社を経て、現職。プレッシャーの多い職場で自身が精神的に追い込まれる中、リーダーを任される。コーチングや心理学の手法を実践しチーム変革に成功。難しいコミュニケーションスキルを誰もが使えるようにした「トライアングルコミュニケーションモデル」を考案。思考法やコミュニケーションをテーマとした研修・セミナー・講演・執筆活動を行う。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。
連載記事「人生はサーフィンのように」をeBook(電子書籍)にまとめた「やる気が出ない本当の理由」を発売。詳細はこちら。
サーフィンのように楽しみながら、人生の波を乗り越えよう。竹内義晴さん執筆人生はサーフィンのようにのバックナンバーはこちら。
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