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人間としての金メダルを目指せビジネスマンの悩み相談室(1/2 ページ)

人に勝つよりも「己に勝つ」。礼儀、人を敬う、敗者の気持ちが分かる。勝者にはそのような振る舞いが求められる。

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 ロンドンオリンピックが終了して早3カ月。史上最多のメダルを獲得し、大いに盛り上がったが、その後はどうしているだろうか。頑張って成果を残した人たちがその後どうなるのか――それは本人、そしてスポーツの場合はコーチや監督、ビジネスの現場ならマネジャー次第である。成果を残した人をその後どうモチベートしていくか、大きな課題となりつつある。今回はそのことについて話したい。

<事例>

ある食品メーカーの新規事業開拓部のF部長は上機嫌だった。前期売上目標を120%達成し、社内で大きく表彰されたのである。新しい年度が始まり、最初の会議でみんなが集まった。F部長:前期は頑張ってくれたね。みんなのおかげで、社内トップの成績をあげ、表彰された。ここで改めてお礼を言いたい。ありがとう。今期はこの勢いに乗って、売上目標を130%達成したいと思っている。できるだろうか。

Wさん:前期は目標達成のために、最後の3カ月、死にもの狂いに頑張りました。今年もやるんですか?!

D君:達成感がありましたが、僕も最後のほうは吐き気がしました。可能性があるところをしらみつぶしに回り、動いて動いて動きまくりました。門前払いも多く、かなり落ち込みもしました。去年は社内で1番になれると意気込んで頑張りましたが、今期もできるか、正直不安です。

Sさん:私も正直精神的にかなりまいりました。同じように頑張れるか、ちょっと心配です。

F部長:みんな、いったいどうしたんだ?!


燃え尽き症候群

 柔道の内柴選手を記憶しているだろうか。2004年のアテネ五輪、2008年の北京五輪で2つの男子66キロ級で金メダルを獲得した。しかし、皆さんもご存じのとおり、最近セクハラで訴えられた。なぜこのような事態になったのだろうか。

 金メダルというのは、人に勝ち、勝ち続けることで達成できるものである。しかし、人に勝つことだけを教えられると、そればかり考えることになる。わたしは、それよりも大切なことがあるのではないか、と考えている。

 それは、人に勝つよりも「己に勝つ」ことである。人間としての金メダルを目指すほうが大切ではないだろうか。礼儀、人を敬う、敗者の気持ちが分かる、そして、周りの人にいい影響を与える。勝者にはそのような振る舞いが求められる。

 話は変わるが、インサイダー取引などで大きな事件を引き起こした野村証券。リーマン・ブラザーズを買収し、グローバル競争に打ち勝つべく、売上を伸ばし、他の会社に勝つことだけを考えた。その結果として数字をかせぐために、いけないと思いつつも、インサイダー取引に手を染めた。野村証券は次のような経営理念を掲げている。はたしてこれを実践できていただろうか。大いに疑問だと言わざるを得ない。

創業以来貫く「お客様中心主義」の徹底により、世界中のお客様のためにワールド・クラスの品質のサービスを提供する。


 プロゴルファーの石川遼選手は、父親から「一流のプロゴルファーになる前に一流の人間になれ」と言われたそうだ。そして、例えばトイレで手を洗った後に必ず周りをふく、といった人間としての基本的なことを徹底的に学んだという。アマチュアゴルフではシングルというのはすごいと言われるが、「マナーのシングルになる」ことが大切なのではないか。

 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の日色保社長に以前お目に掛かった。ジョンソン・エンド・ジョンソンでは人事評価を以下のように行っているそうだ。

1、クレドの実践

2、人材の育成

3、業績

 ジョンソン・エンド・ジョンソンは、クレド(わが信条)で有名だが、その実践を何よりも評価するのである。それがしっかりと実践されていたら、自然と人も育成され、業績もついてくる、という考え方である。

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