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いかにデータを読み、実務に落とし込むか――人を育て、データを見て、毎日改善するITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

データの抽出やツールによる解析などテクノロジはどんどん進化している。しかし重要なのは収集し解析したデータをどうビジネスに生かすかだ。

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 アイティメディアが開催している「ITmediaエグゼクティブ勉強会」に、ECマーケティング人財育成代表、BPIA Webビジネス研究会ナビゲータである石田麻琴氏が登場。ネットショップの店長として、ヤフーショッピング月間ベストストアを8回受賞し、全国第1位を獲得した経験とノウハウを生かし、「Webビジネス成功の秘訣――他社に差を付ける、データ活用の原理原則」と題した講演を行った。

データを読んで、いかに実務に落とし込むか

 「なぜデータを活用したいのか。それは、成果出したい、売上を上げたいからだ」と石田氏は言う。Webビジネスの担当者は、問い合わせの数を増やしたい、アクセス数を上げたい、注文数を増やしたいなど、何らかのレスポンスを向上させたいと考えている。

 そこで、ビッグデータ分析に注目が集まっているが、「その多くはデータ管理の話である。データをいかに取得するか、いかにデータベースに蓄積するか、データを解析するためにどのようなツールを導入するかといった話でしかない」と石田氏は言う。


石田麻琴氏

 「本日、話したいのはデータを読んで、いかに実務に落とし込むかということ。そのためには、選択力と判断力をどのように経営者やスタッフが身につけるか、つまり人材育成が重要になる」分析ツールについてはよく耳にするが、データを読んで実務に落とし込む分野の話をする人は少ない。これはネットショップの店長の経験で、商品の仕入れ販売、集客、運営、物流、カスタマーサポートまでを経験した中で、欲しいデータが明確になっていたから」(石田氏)。

 データの活用は、システムからデータを抽出しマーケティング解析をして、次のオペレーションに生かす「システム」「マーケティング」「オペレーション」という流れになる。そのうち分析ツールは、システムからマーケティングまでの分野である。

 今回、テーマとなるのは、マーケティングからオペレーションに落とし込むにはどうすればよいのかである。石田氏は、「データの抽出やツールによる解析は、どんどん簡単になる。重要なのは、解析したデータをビジネスにどう生かすかである」と話している。

リアルの店舗で分かるのは何を買ったかだけ

 ネットショップでは、アクセスログを解析することで、どんな人が、どんなタイミングで、どんなものを購入したのか、あるいは購入しなかったのかということを知ることができる。一方、リアルの店舗で分かるのは、何を買ったのかだけである。

 例えばコンビニでは、レジを打つ前に年齢層と性別を入力するだけで、結局それしか分からない。コンビニに入って来て、何も買わずに出て行った人のデータは残らない。そのため1日に何人来店したのかは、入り口で数えなければ把握できない。

 「リアルの店舗では、アンケートやポイントカードで登録してもらうくらいしか方法がない。しかしネットショップでは、ログイン情報で、どんな人が、どんなものを買ったかを容易に知ることができる」(石田氏)

 またアクセスログが蓄積できるので、どのページを見て最終的にこの商品を買ったのかも知ることができる。石田氏は、「利用者の購買傾向を分析できることがデータ活用の最大のメリットである」と話す。

 ネットの利点はもう1つある。どんな人が、どんなタイミングで、利用しなかったかも分かることだ。石田氏は、「リアルな店舗では、何も買わずに出ていった人のデータは残らない。ネットショップでは、どのページに遷移して買わなかったのかも把握できる」と言う。

 データ分析の流れとしては、まずマスタとデータベースを作成し、次にデータを集計。最後にデータを解析する。最もシンプルな分析には、「顧客データベース」「受注データベース」「商品データベース」の3つが必要になる。

 「集計では、ネットショップで見るべき数値として、受注売上、受注件数、客単価、販売点数、同梱率など63項目を洗い出している。こうした数値を常にチェックしておかなければならないが、その必要性と分析と理解、施策を繋げる方法を教えてくれる人がいないのが実情である」(石田氏)。

 ほかにネットショップで見るべきデータとして、広告効率、在庫管理、物流効率、システム効率、運営効率、利益管理、運営管理、業務管理、商品分析、顧客分析、受注分析、競合分析、集客分析などがある。

 例えば売上が100万円のネットショップが、売上を500万円にするためには、アクセス人数を5倍にするか顧客効率を5倍にすればよい。次に、アクセス人数、または顧客効率を5倍にするためには何をすればよいのかを考える。

 「ネットショップを成長させるために"何を分析したいか"から逆算で考えていく。しかし将来何が必要になるか分からないので、取れるデータはすべてとっておく。これを"カレーの理論"と呼んでいる。当初は"ビーフカレー"を作っていても、市場の変化で、分析を"野菜カレー"や"シーフードカレー"に変えなければならないことがある。その場合、どれだけ材料を蓄積しているがカギになる」(石田氏)。

 つまり、最初はたくさんのデータを取れる仕組みを作っておき、そこから必要なものだけを取り出すことができる仕組みにすることが有効になる。無限にあるアイデアから、いかに効果的なアイデアを見つけ出すかが重要になる。

 そのためには、データというアプリケーションを使いこなす「人材」の強化が必要になる。石田氏は、「人がデータを理解していなければ、無限のアイデアから効果的なデータを見つけ出すことは難しい」と話している。

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