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ボイストレーニングに腹式呼吸のトレーニングは必要なのか?リーダーは低い声で話せ(1/2 ページ)

低い声は1対1の対話の場面で落ち着きと安定感をもたらす。「この人は信頼できる」と相手に思わせるためにも習得してほしい。

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  • Q1:腹式呼吸のトレーニングは必要でしょうか?

 ボイストレーニングに行くと、もれなくついてくるものに「腹式呼吸」があります。

 「息を吸って〜」

 「はい、お腹をふくらませて〜」

 「息を吐いて〜」

 「はい、お腹をへこませて〜」

というかけ声を聞いたことのある人も多いでしょう。

 この方法は間違っていません。正しい方法です。そして、よい声を出すには腹式呼吸によるしっかりした息の流れが必要です。でも、私はこの腹式呼吸の練習を一度もやったことがありません。というのは、実際に声を出すときにお腹を凹ませては、よい声が出ないからです。

 発声のときは、できるだけお腹を前に出し、張り返した状態がベストです。さらに身体をリラックスさせておく必要がありますが、横隔膜だけは頑張ってもらわないといけません。

 発声のときにお腹を大きく凹ませてしまうと、声のパワーが落ちたり、安定しなくなってしまいとたんに充実しなくなります。よい声を出すために、横隔膜がしっかり使えている状態にしたいときは、お腹ができるだけ前に張り返している状態を維持します。

 第1回、2回で説明してきたように、"横隔膜のスイッチ"を意識できるようになり、"横隔膜のトレーニング"で鍛えて、お腹の張り返しを使えるようになることが、よい声への第一歩なのです。

  • A1:必要ありません。

横隔膜が使えているのか? 確認してみよう

 それでは横隔膜をしっかりと使って呼吸できているかどうか、ここでいつも私が確認のために行っている簡単なトレーニングを紹介しましょう。

【手順1】アゴを下げて口を大きく開けて「ハアッ!」と大きく思い切り限界まで息をすう。

【手順2】口を開けた状態で10秒間、我慢して息を止める。

【手順3】「ハアーッ!」と一瞬ですべての息をはききる。

  • ヒント:できるだけお腹を張り出したまま息をはくこと。

 いかがですか? 手順3で息をはくとき、のどで「kッ……」とか、「あ"っ……」という雑音がしませんでしたか? ノドから雑音がする場合、横隔膜ではなく、ノドで頑張って息を止めていて、横隔膜が使えていない証拠になります。

 横隔膜を鍛えると横隔膜で息を止められるようになり、息をはくときは雑音が出ないものです。そうなれば、自然とノドに負担がかからなくなっていきます。特に、夕方になると声がかすれたり、ノドが痛くなったりする場合は、ノドで頑張っていますので気をつけて下さい。呼吸は、腹式呼吸ができても、横隔膜でコントロールできるようにならなくては意味がありません。ぜひ、横隔膜をトレーニングしてみましょう。

  • Q2:腹筋を鍛える必要はありますか?

 「よい声を出すために腹筋運動をする必要があるでしょうか?」という質問よくあります。答えは、必要ありません。昔、合唱クラブで放課後集まると、最初にみんなで「腹筋トレーニング」をせっせと行っていました。何回できたか、なんて自慢しあったりして。でも、声はちっとも変化しません。それどころか、逆に力んで声を出すクセがついてしまい、後々そのクセをとるのに苦労するはめになりました。当時は、腹筋を鍛えればよい声になると信じていました。

 現在は、さすがにボイストレーニングで腹筋運動をするところはあまり見られなくなりました。腹筋トレーニングを一生懸命行って、スタイルがよくなることはあっても、声とはほとんど関係ありません。欧米のオペラ歌手などを見ていると、必ずしもスポーツマンのような体型ではありません。それどころか、少しふくよかでも、よい声の持ち主はたくさんいます。

 声は横隔膜の筋力で決まります。こう説明すると難しそうに聞こえますが、理屈は簡単。私がよく例えるのが、"マヨネーズ理論"です。マヨネーズは容器の胴を押せば、ニュッと中身が出ます。声が出るのは、これと同じ理屈です。横隔膜がチューブを押す手、そして息が中身のマヨネーズです。手で力強く押せばマヨネーズが勢いよく出るのと同じで、横隔膜がしっかり動くようになれば、無理なく息が流れます。だからこそ、ボイストレーニングはこの横隔膜が使えているかどうかが最大のポイントになるのです。

 横隔膜は、呼吸のためのインナーマッスルです。呼吸することでしか鍛えることはできません。一方、腹筋の筋力は呼吸には役立ちません。だから、スポーツクラブにあるトレーニングマシンでいくら腹筋を鍛えても、腹筋を六つに割ってよい身体をつくっても、よい声にはならないのです。

 横隔膜のトレーニングを続けていると、自分では気がつかないうちに「笑い声が大きい」と周囲から言われるようになります。笑うときに横隔膜を使うからです。久しぶりに大声で笑うと、お腹が筋肉痛のようによじれるほど痛くなることがありますね。これは、横隔膜を使っている証拠です。横隔膜を鍛えると笑い声が大きくなるのは、よりしっかり横隔膜を使えるようになるからです。

 私は、ビジネス・ボイストレーニングのほかに、企業でアカペラ合唱を用いたチームビルディング研修を行っています。最近ある企業で、秋川雅史さんの歌う「千の風になって」を歌ったのですが、男性パートに横隔膜を使った発声法を伝えたところ、普段ボイストレーニングをしていない人たちでも、その場で劇的に声が変わったのです。女性社員たちからは「秋川さんみたいで感動した」「鳥肌が立った」と大好評でした。どんな人でも、横隔膜を動かせば声は確実に変わるのです。

 連載第2回で紹介した「横隔膜ボイス」でしっかりと横隔膜を鍛えれば、腹筋運動をする必要はありません。

  • A2:横隔膜を鍛えるのが正解。
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