2020年の東京オリンピックはITインフラを再構築する絶好のチャンス:ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)
7月4日に開催された「第30回記念 ITmedia エグゼクティブセミナー」の基調講演に、セコム 前会長である木村昌平氏が登場。セコムでの経験を交え、「東京五輪に向けた世界最高水準のIT社会づくり 〜イノベーションと情報セキュリティを考える」をテーマに講演した。
東京オリンピックを警備したセコム
1964年に開催された東京オリンピックの警備を担当したセコム。1962年に設立されたセコムの「警備」という仕事が広く社会に認知された年である。その後、1972年の札幌オリンピック、1998年の長野オリンピックにも警備システムを提供。東京オリンピックから50年を経た2014年、2度目の東京オリンピックが2020年に開催されることが決定したが、東京開催が決まった理由の1つが「安全・安心」である。
セコムのビジョンは「あらゆる不安のない社会を実現する」こと。「困ったときはセコム」と言ってもらうことに徹底的にこだわった事業を展開。あらゆる不安のない社会を実現するために、テロ、事故、自然災害、病気、食糧リスク、サイバーリスクなど、安心・安全を脅かす、さまざまな事象に50年かけて対応してきた。現在、セキュリティ、防災、医療、超高齢社会対応、GIS地理情報、データセンター、サイバーセキュリティなどの社会システムサービスを提供している。
2007年に大阪で開催された世界陸上では、セコムの社員40名が3000名の警備員を指揮した。また2002年の日韓ワールドカップでは、フーリガン対策にセコムの位置情報検索システムが活躍した。さらに2008年の洞爺湖サミットは、セキュリティ上複数のホテルに滞在する各国首脳が歴史上初めて同一のホテルに泊まったサミットである。これはセコムの安心・安全が評価された一例といえる。
木村氏は、「現在のセコムは、単なる警備会社ではありません。世界でもっともテロの脅威が高い英国ロンドン警視庁のテロ対策本部向けのセキュリティシステムを英国セコムがサポートしています。2012年のロンドンオリンピックでも、51会場のテロ対策本部を英国セコムが支援しました。こうした実績が評価され、警備業界のオスカーと呼ばれる“セキュリティ・エクセレント・アワード”を受賞しています」と話す。
また東日本大震災のときには、グループ会社のパスコがGIS(地理情報システム)を使って、災害発生時緊急対応情報を関係各所に提供。データセンター事業では、従来から運営しているセキュア・データセンターに加え、2012年にアット東京を子会社化した。さらに情報セキュリティ事業では、サイバー攻撃対策サービスを提供。現在、連結売上で8220億円、経常利益で1267億円の企業に成長している。
木村氏は、「私自身は、CIOという言葉が使われはじめたころにCIOに就任した。CIOの草分け的な存在と言われていた一方で、CIO不要論を唱えてお叱りをいただいたこともあった。現在はITとは対極にある、人間学、哲学、老子の世界に生きているが、セコムという会社で培った経験が、これからのITの進化にも必ず役立つと信じている」と語る。
ITの進化は産業・社会革命に匹敵
大きな歴史の流れを振り返るとITの進化は、あきらかに産業・社会革命である。その一方で、インフラの脆弱性がITの進化の影となっている。解決のための処方箋は、リアルとサイバーの融合しかない。産業・社会革命を主導してきた最初の力は「サイエンス」である。つまり印刷機や蒸気機関、電話などの発明や発見が工業化社会を牽引していた。
次に「エンジニアリング」である。性能や生産性の時代であり、この時代に日本は世界第2位の経済大国になった。現在は「情報化社会」の時代であり「マーケット」が市場を牽引している。産業を牽引しているのは、あきらかにITである。木村氏は、「ITの進化の本質は、コミュニケーション、ナレッジ、インテグレーションの3つの視点です」と言う。
コミュニケーションとは「関係性」である。社会、国、企業、家族のすべてが関係性で成り立っており、ITはこの関係性を革命的に進化させることができる。次にナレッジとは、「知見」であり、膨大かつ異質なデータを解析することで、これまで見えなかった実態や兆候を見えるようにできる。
最後にインテグレーションとは、「融合」である。センシング技術や画像処理技術の進化の本質的な意義は実体と情報の融合にある。木村氏は、「サイバーテロを防ぐためには、サイバーセキュリティだけでは難しい。企業の優位性も、社会の安全・安心も、リアルとサイバーの融合が勝負の分かれ目になります」と話している。
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